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忘れられない一日

三つ単語のお題を貰って書いた短い物語です。

「誕生日」「友達」「ケーキ」

明日は特別な日!明日はあたしの大好きな恋人のたっちゃんの誕生日。そして、あたしとたっちゃんが付き合って一年記念日。たっちゃんの誕生日はあたしたちが付き合った記念日と一緒の日なの!明日はあたしが生きてきた人生の中で一番幸せな一日にするって今からやる気満々なの!
大好きなたっちゃんのためにどんなお祝いをしてあげようかって、ちょっぴり早いけど、あたしは二ヶ月も前から準備してたの。あたしはドジでマヌケでちょっぴりぬけてるところがあって、とても一人で準備なんかできっこないから、友達のアキとミヨコにも手伝って貰ったの。友達ってマジで大事!
でも、聞いて!だって、一番仲良しで大親友のキクエは手伝ってくれなかったんだよ?なんか長期入院するとかいって。なんで入院するのか聞いてみたら、腰をめちゃくちゃ痛めたからなんだって。何やってんのよ。信じらんない!
だけど、準備は着々と進んでいったから、あたしはルラララ気分。たっちゃんの誕生日までに絶対にばれちゃいけないから、当日部屋に飾るキラキラの装飾とかは、あたしの部屋の押し入れ絶対に見つからないように保管した。押入れがぱんぱんになってマジ困っちゃった。ていうのも、サプライズ好きのたっちゃんのために、いろんなサプライズの仕掛けをケータイで調べて準備したの。あとね、みんなでたっちゃんにプレゼントは何を渡したらいいか一緒に考えてもらって、その度にお茶会したりして、そんな時間が最高に幸せで楽しかった。もしかして、この最高に幸せな時間は、たっちゃんからあたしへ逆にプレゼントされてるんじゃない?って思ったら胸がキューンとしてマジで死ぬかと思った!
そして、いよいよたっちゃんの誕生日当日。今日でたっちゃんはあたしより一個上の年齢になる。今まではタメだったけど、今日からたっちゃんはあたしより一つ年上だ。「明日からは敬語使えよ。おれの方がいっこ上なんだからな」とかいわれちゃったらどうしよう!カッコよくて、あたしデレデレになって、う〜〜んってモジモジしちゃって、もしかしたら昇天しちゃうかも。いろんな事を妄想しながら、あたしはたっちゃんをバスで迎えに行って、二人だけのパーティー会場に連れて行ったの!
「うわ!なにこれ。これ全部お前がやったの?」
そうだよ!とはさすがにいえなかったけど、へへへ。ってはにかんで、なんか全部自分一人で準備したみたいにしちゃった。ごめんね、アキ、ミヨコ。あたしはたっちゃんと素敵な思い出を残すために、スノーを使って沢山かわいい写真を撮った。二人だけの誕生日パーティー。二人だけの付き合って一年記念日。
みんなで一生懸命作ったたっちゃんを喜ばすためのサプライズは全部成功した。マジみんなに感謝。そして、いよいよ一番がんばって作った仕掛けに突入!たっちゃんはお笑いが大好きだから、誕生日ケーキ爆発サプライズを仕込んだの。ケーキを爆発させるやり方なんてまったくわからないから、用意するのは本当に大変だった。作り方をケータイで検索しすぎて、目がマジでショボショボになっちゃったから、マジ勘弁!
「えーーー!なんだよー!これロウソク立てすぎじゃね!?」
たっちゃんは優しいからいちいち大きくリアクションしてくれてマジで嬉しかった。
「こんなでかいケーキ、マジどうやって用意したの!?マジ嬉しいんだけど!このロウソクの火マジでおれが消していいの!?」
消してっ!消してっ!たっちゃんが喜んでくれる顔が本当に嬉しい!でも、まだこれで終わりじゃないんだよ?たっちゃんがロウソクの火を消した瞬間に、このケーキは爆発するんだから!
「火消すよ!?」
たっちゃんは思いっきり息を吹いた。それと同時にあたしは爆破スイッチを押した。爆音が轟いてケーキが四方八方に飛び散った。たっちゃんはひっくり返った。そして、そのまま息を引き取った。享年八十八歳だった。米寿だった。あたしが老眼だったからかな。火薬の量が多すぎたみたいだった。ケーキが爆発した際のショックが強すぎて、たっちゃんは心筋梗塞を引き起こして、あの世へ逝ってしまった。
たっちゃんとは、たっちゃんが長年連れ添った奥様を亡くされてからの交際だったので、やましい事は一切無かったけれど、葬儀ではたっちゃんに米寿のプレゼントであげるはずだった高級ステッキを握りしめていたお孫さん連中に、骨が砕けるほどの眼力で睨まれ続けた。
「よく此処にこれたもんだよな」
お孫さんの誰かが、あたしとすれ違い際にそういった。ケーキが爆発した際、鼓膜が破れて耳が殆ど聞こえないあたしでも聞こえたのだから、相当大きな声でいったに違いなかった。
たっちゃんが亡くなってからは、少しボケてるあたしでも見逃せないぐらい、たっちゃんの遺族の方々からの怨念を感じている毎日です。
でも、あたしもそんなに先は長くないと思います。何故なら、あの誕生日ケーキ爆発の衝撃で、あたしも心臓を悪くして入院する事になったからです。もし、あたしがたっちゃんの所に旅立った際には、あたしの全財産を遺族の方々へのお詫びに充てて償いたいと思っています。あたしは今、病窓で震える手を必死に抑えながら、遺言状を書いています。

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