無門関第十則「清税孤貧」現代語訳

公案現代語訳

本則
 曹山和尚に、僧が問うた。
「私は孤独で貧しい。師よ、どうか、私をお救いください」
 曹山は言った。「清税闍梨」
 清税は答えた。「はい」
 曹山は言った。
「青原白家の酒を、三杯も飲んでいながら、まだ唇が乾いていると言うか」

評唱
 清税は、どういうつもりで、こんなことを言ったのだろうか。
 曹山は、その真意を見抜き、言われたことに一枚上手の返答をした。
 とはいえ、もしもそうなら、清税闍梨が飲んだ酒は、どこにあるというのだろう?


 貧しい様は范丹のようでも、その気概は項羽のようだ。
 生計が立たぬと言ってはいても、敢えて持てる富を競っている。


注記
 清税という名の僧侶については、殆ど詳細が知られていません。
 ほぼ無名に近いのに、「ある僧」としたままではなく、わざわざ名前をだしたところに、何らかの意図があるのかも知れません。
 税という漢字には、所謂税金という以前に、「収穫した物を分かち合う」あるいは「収穫した物を手放す」というような意味があるそうです。
 闍梨というのは、阿闍梨、すなわち、僧侶に対する尊称です。「先生」くらいの感じでしょう。

 青原は、中国の名酒の産地として有名だそうですから、青原白家酒は日本でいうと「灘の生一本」のようなイメージでしょう。

 范丹は後漢の頃の人だそうですが、范冉という名の方が知られているそうです。とても貧しくても泰然自若としていた人だったらしいです。

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