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各種感想・考察文

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既存作品の感想や考察など。 作品の形態やジャンルはいろいろ。
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#芥川龍之介

芥川龍之介「藪の中」考察②

芥川龍之介「藪の中」について、綴ります。  今回は、前半四人の証言について、それぞれ個別に考えます。  次回、後半三人の証言について個別に考え、その後関連させて考えていく予定です。   ■木樵りの物語について  男の死骸の発見者の証言です。  私には、この作中の登場人物の中で、この木樵りの証言が最も信頼がおけるように感じられます。  その根拠は後述しますが、木樵りの証言は、まずそのまま受け取ってもよかろうかと、私は判断しました。    木樵りが発見した死体の状況は以下の通

芥川龍之介「藪の中」考察③

 芥川龍之介「藪の中」の考察について、綴ります。  今回は、後半3人の供述について。  後日追記編集するかも知れません。  なお今回は、3人の供述について、「事実として話していること」と「主観による推測」は記していますが、「嘘や隠蔽」を詳細に判別するということはあまりしません。それは次回以降の予定。  今回はあくまで「こう供述していた」「それによりこう考えられる」程度のことを記す予定です。 ■多襄丸の白状について  本件の容疑者として捕らえられたのは、多襄丸という盗人で

芥川龍之介「藪の中」考察④

 芥川龍之介「藪の中」について、綴ります。  今回はまず、時系列のまとめから。 ■時系列  ほぼ事実と思われることを列挙します。 日時不明 武広と真砂が結婚する。 昨日     武広と真砂がふたりで若狭へ出立する。 昨日午頃   旅法師が武広と真砂を、関山から山科への路上で見かける。 昨日午少し過ぎ 多襄丸が、武広と真砂と出会う。 この間、多襄丸と武広と真砂との間で何かがあり、武広が死ぬ。 昨日午後7~9時 多襄丸が、粟田口で捕らえられる。 今朝      木樵

芥川龍之介「藪の中」考察⑤

 芥川龍之介「藪の中」の考察を綴ります。  今回から、多襄丸、真砂、武広の供述について、綴る予定です。  今回はおそらく、藪の中に3人が入るあたりまでになるかと思います。  真砂と武広は二人とも、真砂が手込めにされた後のことから語っており、それ以前のことについては供述を残していません。  ですから、多襄丸の供述をベースにして考えます。 ■藪の入り口に着くまで  武広と真砂が、武広の故郷、若狭に向かう途中、多襄丸が二人を見かけたのが、事態の発端です。  偶然目にした真砂

芥川龍之介「藪の中」考察⑥

 芥川龍之介「藪の中」について、綴ります。  今回から、事件の核心について考えます。  ここからは、3人の供述が、はっきりと食い違ってくるので、捉え方が非常に難しいです。  ちなみに私は現時点で、黒澤明「羅生門」は未視聴なんですが、あれこれ考えた挙げ句の内容が、万一まるかぶりしてたら、どうしよう。  一通り書き上げたら、その後観てみることにします。  今回は、事件の核心の考察の、序章のような感じになるかと思います。  詳細は、次回以降かな。 ■事が済むまでのこと  多