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「考える脳」と「感じる脳」ー 瞑想に関する誤解

今回は、著者で瞑想教師のヨンゲ・ミンギュル・リンポチェ(Yongey Mingyur Rinpoche)氏の動画を参考に、瞑想に関するよくある誤解を紐解いてみたいと思います。

瞑想という言葉は、マインドフルネスやウェルビーイングとともに広く認知されるようになってきましたが、瞑想という行為がどういうものかを理解するのは難しいことです。一方で、瞑想すること自体は難しいことではありません。

瞑想は、自己認識を深めるためのトレーニング法として捉えることができます。運動が身体の健康のために必要なら、瞑想は「感じる脳」の健康のために必要なのです。瞑想に関する誤解は、瞑想から得られる効果に執着することで生まれると思います。瞑想にとって大切なのは、そのプロセス、瞑想という行為そのものです。その行為から得られるのは、偏った見方からの脱却です。偏見に気づくことで、自己認識も深まります。

動画を見る際には、日本語の字幕を参考にしてください。


瞑想は何も考えないことではない

瞑想とは考えないこと、思考を止めることだと考えている人もいるかもしれません。これは逆効果です。思考を止めようとすればするほど、思考から抜け出すのが難しくなります。例えば、「ピザのことは考えない。ピザのことは考えない」と思っていたら、ピザのことを考えるのをやめることはできないでしょう。

一方で、瞑想によって特定の考えから離れることは可能です。何も考えない状態を体験できると言えるかもしれません。しかし、それは瞑想の副次的な効果だと考えた方がいいでしょう。そのような効果が瞑想の目的ではありません。

瞑想は心を静めることではない

同じような誤解として、瞑想とは心を静め、落ち着きを得ることだと思っている人がいるかもしれません。「落ち着け、落ち着け。」と思っても落ち着くことはできません。ステージに立って人前で何かを話さなければならないと緊張しているときに、「落ち着け。」と思うだけで落ち着くことができるなら、誰も苦労しません。

一方で、瞑想によって心を静め、落ち着かせることは可能です。ただし、先ほどの指摘と同様、これは副次的な効果と捉えた方がいいと思います。

瞑想から得られるそれらの副次的効果はとても素晴らしいものです。しかし、そのような効果に執着することは、逆に、その効果から遠ざかる結果しか生まないのです。

瞑想はその過程に意味がある

瞑想は脳の三つの重要な機能を最大限に利用します。

  1.  一つのことしか集中できないこと、

  2. 経験は記憶されること、

  3. そして、記憶は上書きできることです。

集中

例えば、おりんの音に集中してみてください。聞こえてくるおりんの音だけに集中するのです。目は閉じたほうが良いでしょう。他の音を遮るために、できるだけ静かな部屋が良いです。

何度か繰り返すうちに、雑念が消え、その体験が記憶されていきます。これはおりんである必要はなく、例えば滝の音や波の音など、自然の音の方が心地よいという人もいます。音に集中し、自分が落ち着いていることに気づき、それを繰り返し記憶してください。

脳は一つのことにしか集中できないので、音に集中することで、他のことを頭から忘れることができます。これは長い修業を必要とせず、誰でもいつでもできるのです。

慈悲

次に、苦手な人、嫌いな人の幸せを願ってください。好きな人の幸せであれば簡単なことでも、苦手な人の場合はとても難しくなると思います。

その時に感じるモヤモヤとした感覚、苦手な人の幸せを素直に願えない感覚は、「感じる脳」からのシグナルです。そのシグナルに気づき、自分の意識をそのシグナルに向け、心乱れている自分に集中します。苦手な人の顔を思い浮かべて、それに集中してください。集中していくうちに、おりんのときと同じように、雑念が消えていくのがわかるでしょう。

瞑想は執着から抜け出すテクニック

怒りのような感情は、嵐のようなものです。嵐の中にいると、それを認識するのは難しいものです。しかし、嵐の外側にはいつも静かな空があります。静かな空という新しい視点からは、嵐を認識することができるのです。

自己認識を高めることは、以前にはなかった新しい視点を得ることです。あなたの人生は様々な人に支えられており、人の数だけ世界の解釈の仕方があります。自分の解釈に他人の解釈を加えることで、自己認識が深まります。しかし、私たちは他人の解釈を受け入れることに抵抗を感じることがあります。生まれたばかりの赤ん坊のころは、何の苦労もなくそうできたにもかかわらず、です。瞑想はこれを促進します。

どこでも瞑想

例えば、電車の中で向かいの人の幸せを願ってみてください。職場の嫌いな上司や同僚の幸せを願ってみてください。そうすれば、自分を苦しめている様々な感情は、自分が創り出している視点であることに気づくことでしょう。あなたが変われば、未来は必ずやってきます。


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