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万が一、生きる可能性

いつも通り、朝7時には教室に入り授業の準備をしていると、同じように毎朝早く出勤する数学の先生が走ってきた。(*アメリカ東海岸で教師をしています)

シマ先生!早く来て!地下への階段にシマリスがいる!

何!??? どこからどう入ったのだろうか、ドアも窓も厳重に締めてあるから昼間のうちに忍び込んでそのまま一晩閉じ込められたのかもしらん。

ということで早速階段をそろそろと降りて行く途中で隅っこに丸くなっているかわいそうな小動物が見えた。そして私はすぐ気づいた・・・

シマリスちゃう、モモンガや

この辺にはモモンガ (flying squirrel) もたくさんいるらしいけれど夜行性なので目撃する機会はほとんどない。モモンガの存在を知らない人もいるのではないだろうか。数学の先生も ”え!?ここら辺にモモンガがいるの?” と驚いていた。

2人で箱とホウキを持ち、なんとか彼が1階の裏ドアから出て行くように追い詰めようとしたが、ちょろちょろと動き回りどうにもいかない。あまりに追いかけるとストレスと恐怖で死んでしまうかもしれないと思いながらも、このまま地下にいると音楽室にやってきた生徒たちにさらに怖い思いをされられてしまう。

そう話しながら2人で30分ほど格闘したのち、小さな物置スペースに逃げ込まれた。とりあえずそこなら上へ向かう階段もあるし、違うドアから出て行くことも可能なので外へのドア以外は締め切り、箱の中におやつのカシューナッツを入れておいた。万が一お腹が空いていてカシューナッツを食べようか、と箱に入るかもしれない、そう思いながらしばらく近寄らなかった。

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ランチが終わった1時ごろにもう一度そろりそろりと物置スペースまで行ってみると、かわいそうなことに彼は床の角の隅っこで丸くなり眠っているようだった。箱を持って近づいたがウンともスンとも言わず、丸くなって顔も見せない。

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教室にあった忘れ物の制服を手に、彼をすくい上げ、そのまま箱に移動した。まだ丸くなっていてちょっともぞもぞと動いたが眠っているようだった。夜行性だから昼間は眠くて仕方ないのか、それとも今朝の恐怖で心が折れているのか、どこか怪我をしているのか見当もつかない。なので夫に電話をしてどうしたらいいのか聞いてみた。

夫は ”箱のままそっと木のそばに置いておけば外の気配を感じていなくなる” と、と言うのでその通りにした。

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それから更に2時間・・・・もう一度見に行くと、彼はまだ制服にくるまって丸くなっていた(涙)。うぅぅぅ、ひょっとしたらもう弱り果てて元気にはならないのかもしれない、そんなことを思って苦しくなるが、日が暮れて目が覚めた時に

あ、外だ!やったー!出られた!

と元気になってくれるかもしれないと期待してそのまま置いてきた。

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明日は週末なので箱が空になっているのかどうか見に行けないのが辛い。

そんな話を帰宅してから夫にすると

”え〜 箱の中でも動かないならもう明日には死んでいるかもしれないね” と言う。

そうかもしれない、とはわかっていても、もうどうしようもない。地下に閉じ込められたままだったら確実に死んでいたであろうから、万が一で生きる可能性が残されたのだ、と自分に言い聞かせるけどやっぱり悲しい。

月曜日に箱を回収しに行くことを考えると今からキュッと心が痛くなる。

万が一のモモンガでいてくれ。


シマフィー 

*トップの写真はNational Wildlife Federation よりお借りしました。


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