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ロマンチック・ウンチク

まだアメリカで大学生になったばかりの頃に花束が必要になり、花屋さんに出向いたことがありました。
スーパーでももう束ねてある花束を10ドル20ドルで買うことはできるけれど、自分の作ったイメージのままにブーケにしてもらいたいとの思いがあり、花屋さんで作ってもらうことにしたからです。

その時にまだ20歳そこそこの私の生活の中にはなかった花関連の語彙を調べることになり(出向く前に質問されてもいい様に予習したのです笑)、いくつか好きな花の名前を覚えました。

Peony ピオニー、シャクヤク
Ranunculus ラナンキュラス
Astilbe アスティルビー、アスチルベ
Orchid オーキッド、ラン
Hydrangea ハイドレンジア、アジサイ

そしてその時に カスミソウを英語では Baby’s Breath ベイビーズブレス(赤ちゃんの吐息)と呼ぶのを知り、素敵な名前だ〜と感動したのを覚えています。

日本語では霞、野原にぼんやりと白く掛かる白い霧。
英語では吐息、小さな赤ちゃんからポゥポゥと小さく吐き出されるピュアな息。

文化が変われば表現が変わる、そんな当たり前のことを初めてはっきりと意識した気づきのように思います。

そしてそれから暫くたち、中国の大学で教師をしていた私は生徒達から花束をもらいました。大きなピンクのバラが30本あまりたくさんのカスミソウに囲まれていました。

生徒達に、“この小さくて白い花は英語でBaby’s Breath というのだよ”と教えると、みな へぇーーー と驚き、とてもアメリカ的な表現だね、とかつての若かった私の様な反応をしました。

その中の1人が 中国語では マンティエンシンと言います と教えてくれました。

満天星・・・中国ではこの小さな無数の花が咲く植物を夜空にきらめく星になぞらえたのですね。

カスミソウは花束では主役を張らず、添え物として・引き立て役として使われることが多いですが、霞、吐息、星、と3つの言語では最高に情緒あふれる美しい名前がついていることに、ちょっと嬉しくなりました。

霞、吐息、星、どれもが見えるけれども手に掴めない・・・でもこの花は触って愛でることが出来ます。

愛する誰かに花束を贈る時、このロマンチックなウンチクで愛の告白でもしたら上手く行きそうではないですか? 


シマフィー

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