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薄暗い記憶

この街には何ヶ月住んでたっけな。毎日学校と自宅の往復で、たまの休みにやっと観光客が訪れる公園や、大聖堂や、広場なんかにちょろっと行くことが出来た。違う街に引っ越すまでに全部行きたいと思っていたけれど、果たしてどこに行けなかったのかも覚えていない。

美しい街だったけれど、結局はあまり好きになれなかった街。

昼間は観光客で賑わっていてあまり目に見えないけれど、夜になると道路に散らばるゴミや犬のフンやタバコの吸い殻が本当に嫌だった。

仲良くなった生徒や同僚は本当に優しかったけれど、それ以外はよそ者への差別的な言動も行動も多かった。そしてそんな人たちが”地元民の当然の権利”のように、南アメリカ訛りのスペイン語をバカにしたり、目を釣り上げたジェスチャーで ”チーナ(中国人)"とはやし立てるのを耳にするのは毎日だった。

簡単なフレーズのスペイン語が通じず、ピャッピャッと猫を追い払うように手を振られたこともある。唯一出会った日本人女性はこの街にやって来る日本人女性は素早く排除したいタイプの人だった。

滞在中に2度もひったくりに遭いカメラを盗られたので、残っている写真はごくわずか。

でも、自分の住んでいた通りと、ずらりと並んだハモンイベリコと、窓いっぱいのバカラゥ(タラの塩漬け干物)、それだけで十分のような気もする。

青い空に光るオレンジ、陽気なフラメンコが聞こえて、バルで談笑する若者たちがキラキラ光っている場所だったけれど、私にとってはこんな風にちょっと薄暗い記憶。そんなスペイン、アンダルシアのセビリア。

シマフィー 

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