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母の日に:ぽてぽてのお母さんの話

*この記事は連続100日投稿時の2021年2月に書いたものに加筆し編集したものです。この記事で555日、毎日記事をアップしたことになります!月日が経つのは早いなぁ〜

お母さんは優しい。怒られた記憶は全くない。

若々しくて、美人で、ニコニコ可愛くて、参観日はいつも友達に ”いいなーシマちゃんのおかあさん、綺麗でいいなーーー”と羨ましがられるのが嬉しかった。
前は153センチあったけど、今は149センチに縮んだ。
ポテポテ体を揺らせて歩く。遠くから人混みに紛れていても、顔が見えなくても、ポテポテ歩く姿でお母さんだとわかる。

自分が幼い頃に憧れだったピアノを何年間のローンで手に入れ小さい私に習わせてくれたが、働きづくめで時間がなかった時代を終え、歳を取ってからやっと自分の練習を始めた。それなのに家に入ってきていた小さなネズミを殺すのが可哀想で ”自然に出ていくかもしれないから” と待っていたらピアノの中についているフェルトをかじられて盗まれており(幸い家の中に巣はなかった)、もうピアノは使い物にならなくなってしまった。

中学生の時は、仕事で夜遅かった翌朝にお弁当を作る時間がなくて、ごめんねごめんねと謝りながら、近所の店で買ったお弁当を詰めなおしてもたせてくれた。
時間があるときはそこらへんでは買えない最高に美味しいタマゴのサンドイッチを作ってくれた。

私の受験を口実に二人で東京観光に出かけ、あちこち食べ歩きをし、シマちゃんは大学生になれていいなーシマちゃんはいいなー とニコニコしながら東京の女子大に送り出してくれた。

私が海外に出て日本人ではないボーイフレンドを連れて帰国するたびに、お母さんも将来のために英語を習う!と頑張り、本もたくさん買い、英会話教室にも通ったが、夫の日本語がペラペラなのに安心してやめた。

アメリカに3回来たがその度に何かしら事件が起こり、大笑いしながら楽しい時間を目一杯過ごし、大人の私に ”欲しいものは何でも買ってあげるよ” とニコニコでモールに出かけた。
大自然に感動し、シマちゃんはいいなーシマちゃんはいいなー と言いながら帰りの空港でバイバイと手を振った。ゲートに向かうお母さんはニコニコしながらポテポテと歩いていた。

中国に来たときには私が事前に“誰も信用してはいけないよ”とキツく言ったのに、友人が仕掛けた“空港タクシー乗れ乗れ詐欺”にまんまと引っかかり、ひょいひょいとついて行き、私に怒られた。

私のたまの帰国でデパートに出かけた時は、エスカレーターの ”安全のため、小さなお子様の手をお繋ぎください” のアナウンスが聞こえると私の手をキュッと握り ”シマちゃんはお母さんのお子様だから” と笑うお母さん。

おととしの夏は9年ぶりにアメリカに遊びに来る予定をたて、航空券も買ったのに、パンデミックだったので来れなかった。
どこにも行かなくていい、我が家でシマリスと野鳥と遊んで、バーベキューで肉を焼き、庭を眺めてゆっくりすれば幸せと言っていたのに、先送りになった。

私のようにメンドくさいことや我慢できないことは放り投げたりしないお母さん。
正しく生きること、優しい心を持つこと、何にでも誰にでもいたわりの情を示すこと、そんなことを二人で話したことはないけれど、そんなことは全部お母さんから学んだ。

そんなお母さんに聞いてみたことがある。

”お母さん、シマがもし誰かを殺して指名手配になったらどうする?”

いつもの100万円拾ったらとか王子様と結婚したらとか、そんな馬鹿馬鹿しいもしも遊びの延長だった。

お母さんは一瞬も考えずに言った。
”家にあるお金を全部持って、シマちゃんと一緒に遠くまで逃げる、絶対に捕まらない”

我慢をたくさんして、人に遠慮をして、コツコツと正しいことをして生きてきたお母さんからそんな答えが返ってきたことに心からびっくりした。
でも、私のお母さんの答えはそれ以外に無いと思える答えだった。
お母さんの顔は真剣だった。


今年の夏はアメリカでシマリスと野鳥と遊べますように、と願っていたけれどやっぱりまだ叶いそうにない。

大好きなアルフィーのライブも”まだ安心できないから” と遠慮したのは、大胆だけれど慎重なお母さんらしかった。
私は生のアルフィーを観たら元気が出るだろうなぁ〜と思い、チケットが取れるギリギリまで押してみたけれど ”次があるから” と先送りにした。
50周年のライブには一緒に行けたらいいなぁ、と思っている(あと2年!)

ふと気がつけばポテポテと歩いている自分は、かつて私をアメリカに送り出してくれたお母さんの歳をとっくに過ぎている。

早く会いたいなぁ、お母さん!
母の日、おめでとう!ありがとう、お母さん!
もうすぐアルフィーのブルーレイ届くよ〜

シマフィー 


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