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メヌード、$3.99

ミネソタ州からコロラド州の大学に転校したときに一番うれしかったのは、朝玄関を一歩出ると目の前にロッキー山脈が広がる風景。
それまで住んでいたミネアポリスは "日曜日の新聞の上に立てば州全部が見渡せる”というジョークがあるほど平坦な街だった。
それでもミネアポリスは素晴らしいところでそこを去るのは本当に辛かったのだが、新しい家の前にででーーーんと構えているロッキー山脈を見た瞬間その辛さは消えた。

そしてもう1つの嬉しいことはメキシコ料理の店があちこちにあり、どこも安くて美味しかったこと。
ミネアポリスにもヒスパニック系の移民はいたのだろうがあまり見た覚えがない。メキシコ辺りから遠い極寒の地へ移住するのは大変だろうから数が少なかったのだろう。ミネソタに多い有色人種の移民はベトナムやラオスからのモン族やアフリカの人たちだった(1990年代の話です)。
コロラド州はメキシコの国境にも近いのでメキシコ人も多いし、2世3世もたくさんいる。

例外もあるだろうがアメリカで外食すると日本よりもずっとずっと割高だ。量が多いというのもあるが単価も高いしチップも必要なので、学生の時はレストランに行くことはほとんどなかった。なので普段はファストフードか安くて美味しい中華かメキシカンばかり食べていた。

大学の近くに小さなメキシカンがあり、週に何度も寄っていた。
カウンターの向こうで5−6人のおばちゃんたちがせかせかと動き回るのが見える。トルティーヤをひたすら焼いているおばちゃん。
流れ作業でタコスをパッパッと作るおばちゃんチーム。
大量のレタスやトマトやアボカドを刻むおばちゃん。

注文の品を待っている間(といっても3分ほど)おばちゃんたちを見ているのが楽しかった。店員さんはみなスペイン語を喋り、客もスペイン語を喋っていた。
私もしばらくしたらスペイン語で注文が出来る様になった。

頼むものはいつもメヌードというホルモンやらの内臓が入ったスープで、それに銀紙で包まれたトルティーヤが5−6枚付くセットだった。ソーダを1缶つけて3ドル99セント。


記事用に画像を探したがなかなか記憶にあるものとマッチするものがない。これが一番近い(SparkRecipes からお借りしました)

大きなボウルは使い込まれており表面の柄は薄く掠れフチは何箇所もかけていた。並々と注がれたスープは具沢山だがいったいどんな内臓が入っているかはわからない(笑)でも飽きることなくいつもメヌードを食べていたので、おばちゃんたちは私が入店すると"あ、メヌードが来た”と思っていただろう。
トルティーヤをたくさんおまけしてくれたこともあるし、やたら甘いクッキーを貰ったこともあるのでおばちゃんたちも私を常連としてみてくれていたのだと思う。

あの店はどうなっただろうか・・・・懐かしく思い返しながらちょっと検索してみたら、まだあった。

名前も場所も変わらずあったけれど、もう私が通ったあの店ではない。
ファミレスみたいだ。綺麗なウェブサイトがあること自体、もう違う店だとわかる。

メヌードはソーサーがついた小さくおしゃれな白いボウルに入っており、7ドル99セントになっていた。

いつかコロラドを訪れたいな、とまだ思うが、必ず寄らねばと決めていた店が1つ減ったのが悲しい。

シマフィー 

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