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いろんなおかお

お母さんはわたしをお外にだしたがらないの。
「外はあぶないから!」って。お外はおもしろそうなものばかり。
だからわたしはおでかけすることにしたの、お母さんにはないしょよ。

お外をあるいているとお面をかぶったおとこのことであったの。
かれのかおはずっといっしょでつまらないわ。
だからわたしはきいたの、「なんでそんなかおをしているの?」って。
「つまらないわけでも、かなしいわけでも、おこってるわけでもないんだ。
ただ、ぼくはみんながこわくていつもこんなかお。
そうするとぼくはいつもひとりだから、きもちがらくなんだ。」
つまらないの、わたしはおかあさんと遊んでるほうがたのしいわ。

じゃりみちをあるきながらどんどんすすむと、こんどはピエロさんがいたの。
ピエロさんがあんまりおどけるものだから、わたしはけたけたわらったわ。
でも、ピエロさんはずっとわらってばかり、わたしなんてすぐないちゃうのに。
だからわたしはきいたの、「なんでいつもわらってるの?」って。
「ぼくはとってもかなしいんだ。でもないているとだれもわらってくれないだろう?
だからぼくはおどけて、わらうんだ。そしたらみんながわらってくれるから。
そしたらぼくはすこしだけさみしくなくなるんだ。」
へんなの、かなしいのにわらうだなんて。
わたしにはよくわからなかったわ。

まちにつくときぃきぃさけんでるおんなのひとがいたわ。
わたしはちょっとおっかなくってみみをふさいだわ。
そしておもわず、「なんでこんなにおこってるのかしら!」ってもらしたわ。
そしたらうしろからこえがして
「かのじょはね、よわいんだ。
とってもよわいからああやっておおきなこえでごまかしてるんだよ。
そしたらきみみたいにみんなかのじょをちゃんとみようとしなくなるだろう?
よわいのをみられたくないからおこってるんだよ。」
いつのまにかうしろにおじいちゃんがいたわ。
かれのかおはしわだらけでわらってるようにも、ないてるようにもみえたの。
「あれま、おじょうちゃんにはかおがないじゃないか。」

おじいちゃんはつえでわたしのかおをさすとそういったの。
わたしはとってもおどろいておうちへもどったわ。
かがみをみてほっとした、なんだ、かおはちゃんとあるじゃないの。

あら?これはわたしのほんとのおかおかしら?

「おかあさん!はさみ!はさみをもってきて!」

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