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ちっとも大丈夫じゃない人が、なぜか「大丈夫」と言いがちという不思議


「大丈夫」という言葉の話は、どこかで話したことがあるような、ブログやSNSで書いたことがあるような気がするのですが、過去記事が見つからないので再び、今の気持ちで書いてみます。


「大丈夫」っていう言葉は、なぜか大丈夫じゃない人が使うことが多くありませんか?

学生時代、仲のいい友人が電話でどうにも元気がなくて、電話口の声も消え入りそうな感じで「大丈夫?」と声をかけて、「うん、大丈夫」って言うけど、大丈夫じゃないんだよね? それ絶対話を聴いてほしいやつだよね? 

貧血で駅のホームでしゃがみこんでしまった人に「大丈夫ですか?」と声をかけて、「大丈夫です」「少しの間こうやってじっとしていれば」。
いや、それ絶対大丈夫じゃないでしょ。

職場で予算要求のためにあちこちから見積書を集めて、業務内容や金額を設計してる隣の係の主任さんに「大丈夫ですか? 何か手伝いましょうか?」と声をかけたら「大丈夫です(キリッ)」。5つも6つもそんな業務を抱えていて明日調書の締め切りですけど、絶対大丈夫じゃないよね、っていうか(キリッ)ってどういうことよ。


ああ、何で世の中にはこんなに大丈夫じゃない「大丈夫」が溢れているんでしょう。もはや「大丈夫」という日本語の意味は「大丈夫じゃない」と辞書に記載すべきでは。


そういえば「大丈夫」の辞書的な意味は、「しっかりしていて、心配のない様子」(三省堂 例解小学国語辞典)だそうです。

いや、むしろ「大丈夫」って言われると心配になる確率の方が高いのですが……。

ちなみに言葉の由来としては、元々「夫」は「男性」の意味で、中国では成人男子を「丈夫」と呼びます。「大」が付くと特に立派な男子で「大丈夫」。これが非常に強いとか非常に健康であるという意味になり、その後、しっかりしている、心配ないという意味になったようです。


これは私のとても個人的な感覚なのですが、大丈夫じゃない人が使う「大丈夫」には、「他人に迷惑をかけられません」という雰囲気が込められている気がします。

そうだとすると、「大丈夫」という言葉の本当の意味は
「本当は大丈夫じゃないのですが、あなたに迷惑をかけたくないので放っておいてください」
ということなのではないでしょうか。広辞苑の改訂が待ち遠しい。


ただ、誰かに心配そうに「大丈夫?」と声をかけられたときに、とっさに「大丈夫です」と言いそうになる人に知っておいてほしいことがあります。

それは、誰かに貢献できることはその人の幸せにつながるということ。

だから、あなたに「大丈夫?」と声をかけてくれた人のことが憎いのでなければ、その人が幸せになる支援だと思って貢献させてあげてはいかがでしょうか?


『嫌われる勇気』のアドラー心理学には「貢献感」という言葉があるそうです。簡単に言うと「他者に貢献できている」と自ら感じられることで、幸せになるという考え方。


「大丈夫?」と声をかけられた人を頼ることが迷惑になるなんて考えずに、むしろ「あ、今この人を頼ったら、私はこの人が幸せになる支援ができるんだわ」くらい思って、「ありがとうございます。実はかくかくしかじかで……」と打ち明けて、相談し、差し出された手を握ったらいいんです。


これを仕事場の話で考えると、「大丈夫?」と声をかけられる人、声をかける人だけではなくて、チーム全体としてピンチに陥らないためにも、やはり適切なタイミングで助けてもらうことはもはやスキルといっても過言ではありません。

ときどき助けられるのが下手な人っていませんか?

もうニッチモサッチモいかなくなってから「すみません、実は……」って上司に相談するタイプの人です。そのあと、チームのみんなでその人のリカバリーを支援するのに人手を割くことになったり。

「大丈夫です(キリッ)」と拒絶するよりも、ちゃんと他者を頼れる人の方が、実はチームに迷惑をかけなかったりするものではないでしょうか。ヤバいときにはすぐに相談するんだぞ、って新人のときに教わりますよね。



さて、大丈夫じゃない大丈夫の話に戻ります。


これを読んでいる人の多くは本当に大丈夫で、「大丈夫?」って声をかけてもらうことも少ない人が多いかもしれません。私もあまり「大丈夫?」って声をかけられた記憶がありません。

でも、人の調子は変わるもの。

いつか(それは明日かもしれない)、「大丈夫?」と声をかけられる側になる日が来るかもしれません。

「大丈夫?」って声をかける人は、絶対に支援したくないと思う人に「大丈夫?」と声をかけたりしません。少なくとも私は、この人の支援ならしてもいいな、私もそう思うしチームにとってもその価値はあるな、そう思って声をかけているつもりです。

つまりは「大丈夫?」って声をかけられる時点で、支援される資格はあるし、繰り返しになりますが、支援されることで支援を申し出てくれた人の貢献感を満たし幸せになってもらう助けができるのです。



だからどうか「大丈夫?」は、「大丈夫!(=本当は大丈夫じゃないのですが、あなたに迷惑をかけたくないので放っておいてください)」ではなくて「ありがとう」と受け止めてみてはいかがでしょうか。

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