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昼食が用意されている生活と用意される側の私の今

 こんな豪勢な昼食を頂いて良いのだろうか。
 今日はイベントに参加するために早起きしたのに結局家を出ることなくそのままベッドに舞い戻り、そのまま二度寝して今の時間まで何もしてこなかった私が、働いている親の手前でこんなものを食べさせてもらっていいのだろうか。
写真には乗っていないが味噌汁もある。
 頂く。油っぽく濃い味。まさにチャーシュー丼。これを出掛けに作っていったのかお母さんは。私がただ何もせずしょうもない幻想を見ながら寝ている間に? 豆もやしのシャキシャキした食感とタレの染みたごはん。
 食べ進めていくと奥に隠れていたメンマが現れた……そこで気づく。これは昨日お母さんと買い物したときに買っていた半額の「ご飯に乗せるだけでいいおかず」じゃないか? きっとそうだ。少しだけ安心する。お母さんもちゃんと楽をしていた。本当によかった。
 しかし反対側にあった小さなチャーシューで改めて気づく。この手前の分厚い豚バラはやっぱりお母さんが焼いたものだと。冷凍していたコストコの豚バラをわざわざタレに絡めて焼いてくれたのだ。ああ、なんて労力! だから追加のタレが置いてあるんだと最初からわかっていた! おなかをすかせていることを心配したのだろう、追加のご飯と一緒にタレが! ある!
 ここでもう泣けてくる。実際は無言で一人食べ進めていた。孤独のグルメよろしく、この文章を頭の中で語りながら食べていた。おいしい。ありがとうお母さん。
 これは完食するのが礼儀だ。食事制限中のデブであってもお残しは許されない。だってこれを急いで準備して置いていってくれたのだ。空にしてお返しするしか応えるすべがない。
 追加だれをご飯にかけ、食べ進める。味噌汁を飲む。このインスタントの味噌汁だって、中身を器に開けて湯を沸かして注がねばならない。今の私にはその労力すら使えない。ただ腹をすかして転がっているのがオチだ。味の濃い丼をスムーズに食べるために用意されたろう汁物。お母さんの細やかな気遣いがここにもある。泣けてくるじゃあないか。
 完食した。途中残そうかと一瞬過ぎった邪な考えはねじ伏せて、米ひと粒も残さず完食した。
 食器を水に浸けておく。今はこれくらいしかできない。でもまた気力が回復すれば、これを綺麗に片付けることができるだろう。そうして母の力になることができるだろう。
 おいしかったです。ごちそうさま。ありがとうお母さん。

 とても恋しくなったので早く帰ってきてください。何もできなかったけど完食はできた私より。

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