周辺国の属国化狙うプーチンの異常
ウクライナを攻撃しているロシアの大統領・プーチンの異常さが目立ってきた。ウクライナの欧州最大規模のザポロジェ原発を攻撃し制圧。病院、学校、一般住宅を爆撃し死傷者を生み出し、燃料気化爆弾やクラスター爆弾の使用なども実施しているという。ジュネーブ条約や国連憲章、国際法、IAEA(国際原子力機関)憲章などに反するとして世界から非難が続出している。
プーチンは「ウクライナは核兵器を取得して核保有国の地位を得ようとしており見過ごすわけにはいかない」とウクライナ攻撃を正当化している。しかし、ロシアはウクライナの病院や複数の学校、一般住宅などを攻撃し、国際人権団体ではこうした無差別攻撃はジュネーブ条約やオスロ条約などに違反しているとして中止を求めている。
国際司法裁判所(ICJ)や国際刑事裁判所(ICC)はロシアの攻撃は戦争犯罪にあたるとして審理を開始しているが、ロシアは欠席し、まったく耳を傾けようとしていない。プーチンはロシアで諜報を主任務とするKGBで一貫して勤務してきた。敵対国の転覆などの謀略で人生を過ごしてきた人物だ。それだけにウクライナをロシアの統治下におくことを狙いとしており、国際法違反などを無視することを何とも思っていない。まさに目的を達するためには手段を選ばないやり方なのだ。
■ロシアは国際法造反で攻撃―ウクライナの属国化に血道を上げる―
ウクライナとロシアは交戦を一時停止して住民を安全な場所に移動させる「人道回廊」を設ける話合いを行なっているが、この交渉中もロシアはウクライナ攻撃をやめておらず、人道回廊の到着先を当初は臆面もなくロシア国内に設定した。
ウクライナ側は当然ながら反発し、話合いを続けていたが、3月14日に10ルートを設置することでロシア側と合意した。プーチン・ロシア大統領には人道的発想などはなく、いかにウクライナを欧州側に寄せ付けず、ロシアの支配下に置くかという視点で抑え込もうとしているのが実情なのだ。
ロシアによるウクライナ侵攻は、東部、北部、西部からだけでなく南部からも始まり、ミサイル、戦車などを投入している。首都キエフは包囲され陥落寸前で、民間人の死者が2000人以上となっている。ウクライナがNATOに加盟していれば、加盟国への攻撃は全NATOへの攻撃と受け止めNATO全体で対ロシア戦線に介入できるが、ウクライナだけでなくロシア西南部のモルドバ・北西部のフィンランドとスウェーデンなども未加盟でロシアの侵攻に戦々恐々としている。
このため、ヨーロッパ諸国は非加盟国に武器、戦闘機などの供与で支援し、ロシアの侵攻が広がらないよう警戒するとともに対露経済制裁をさらに強めている。IMFもロシア批判にかわっている。
増えることを警戒している。NATO未加入のモルドバ、フィンランド、スウェーデンなどもロシアのウクライナ侵攻に関連して危機感を強めているわけだ。
停戦交渉は継続中だが、ロシアの要求であるウクライナの中立化と非武装化は、事実上ロシアの統治下にはいり旧ソ連邦の再構築を行なうことを意味するため、ゼレンスキー・ウクライナ大統領は「ばかげている、降伏はしない」と拒否している。NATO諸国は対ロシアの経済制裁を一段と強化し、武器、戦闘機などの援助を拡大している。
高校、浪人、大学生活などで私もロシア文学によく触れたものだ。ドフトエフスキー、ツルゲーネフなどロシアの小説に出てくる人物は人生を深く考え悩める人が多かった。
しかし、現在の大統領プーチンは、KGB出身で人生をずっと諜報と謀略を考えることで過ごしてきた人物である。現在のウクライナとの戦争をみても、プーチンは平気でウソのニュースを流し、ウクライナの孤立を図ろうと様々な宣伝、偽情報を流すが、国際社会はむしろプーチンの言い分に疑いをもって見ている。それどころかロシア国内の約70の都市でプーチンの戦争に反対するデモが連日行われており、ロシア内部からの崩壊もありうるとみられるほどだ。
このためプーチンはウクライナのNATO加盟、NATOの支援を最も警戒しており、ウクライナとの停戦協議に「中立化」やNATOに加入しないことを求めている。NATO加盟国が攻撃を受けた場合はNATO全体への攻撃とみなし、NATO軍が支援することになっていることをロシアは恐れているのだ。
ウクライナはNATO加盟を申請しようとしているが、今のところ未加盟でNATOの軍事的支援は見込めない。プーチンはソ連邦解体後にソ連から離脱した周辺国を再び統合して大ソ連邦を夢見ている。クリミア半島の出兵が成功し、同地のクリミア自治共和国及びセヴァストーポリ特別市を乗っ取りロシアは自国の領土にしたが、国際社会は認めていない。
ウクライナやかつてソ連邦支配下にあった北欧2ヵ国、バルト3国なども同様の手法で旧ソ連邦の支配下に置こうとしているわけだ。ロシアが停戦を望まず降伏を要求しているのはそのためだ。
しかし、ロシアの策略に危機感を強めており、もしロシアが小型の核戦力を使うようなことになれば、世界は第三次大戦に入ることも懸念され始めている。
【Japan In-depth 2022年3月19日】
掲載いただいた記事には、内容のまとめも掲載いただいておりますので、ぜひ合わせてご覧下さい。
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