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経済的に破綻した翌月に子供が生まれた夫婦の話し(その8)うまい話し

目の前にとまった黒塗りの日産プレジデント。
ボクサーのような体型の男が運転席から飛び降り、素早く後部座先のドアをあける。
そこには細身の白髪に金縁眼鏡の紳士が乗っておりました。
その金縁眼鏡の男が北野社長に軽く会釈「はい、おつかれさん」と言い、車から降りてきた。
助手席からもう一人、魚の鮒みたな顔の男が降りてきた。
この状況から村下会長がこの金縁眼鏡の男だとわかった。
その金縁眼鏡男は、歴史の教科書にでてくる豊臣秀吉が金縁をかけたような顔だと感じた。
「北野さんごくろさん。」
「この人が 彼?」
「いやー悪いね 今日はよろしく」と名刺を出してきた。

その名刺は株式会社新住宅建設 代表取締役 村下吉男と書いてあった。
村下会長がつれてきた ボクサーと鮒男とも名刺を交換した。
そこには株式会社新リゾート開発社と書いてあり
役職はボクサーは経理、鮒男が常務と記載されていた。
私を除く4人は顔見知りのようでした。
すると村下会長は「ここ知ってる?」
「ここワシの持ちもんで、ずーとしまったままの建物なんや」
「そんでや、今度ここを大人の趣味のお店を集めた施設にするや」
「釣り、陶芸、盆栽、囲碁、将棋、趣味に特化したのお店を集めるや」
「そこでや、まずここのラブハウスで食事や休憩ができるように鮎の店をやってほしい」
「あんたにそれをせんかって話しや」
「とりあえず中を案内するからついてきて」と言い
そしてボクサーに向かい
「おい正面玄関あけてくれ」と人差し指をあっち向いてホイのように動かし指示をした。
指示を受けたボクサーの動きは素早く、すぐに正面玄関の鍵を開錠、高さ3メートルはあるであろう両開きのガラスのドアの真ん中に指を差し込み右へスライドさせた。
本来なら自動で動く巨大なドアが、ゆっくりゆっくりと両脇へスライドした。
昔し、繁盛していた頃のレストランの面影を感じる施設中に風が吹き込み、建物の床を覆っていた埃が舞い上がりチンダル現象を起こした。
「どうや?君」
「ここに『金川』みたな 鮎 の塩焼きを喰わす店を作ってくれんか?」
「君、『金川』しらんか?」
お恥ずかしい話し、その時の私は金川さんを知りませんでした。

つづく



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