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講師のおすすめ本①~こんな日に読みたい本🍁~

こんにちは、志高塾です。
芯から冷える今日この頃、みなさま元気にお過ごしでしょうか?

さて、弊塾では講師のおすすめ本を定期的に募集し、掲示しています。今回とりあげるのは、高槻校の社会人講師・北村による図書紹介文です。テーマは、「こんな日に読みたい本」。

掲載にあたって、北村と一緒に授業に入ることが多く、一番そばで見ている社員の三浦にコメントを書いてもらいました。

とっても細かなところまで気を利かせてくれる、あたたかく優しい先生です。けれどもそんなあたたかさと共に指導に欠かせないしたたかな厳しさあり、しゃんと背筋伸ばさせてくれます。本選びにもそういう、「優しいだけではない」という、ほんとうの優しさがにじんでいるように思えます。

本の紹介文と合わせて、北村が教室で子どもたちとふれあう姿をぜひ思い浮かべてみてください。そして、「『優しいだけではない』という、ほんとうの優しさ」をゆっくりとご堪能頂ければ、きっと心も体もぽかぽかあたたまります。

なんだかモヤモヤする日に読みたい本(小学校高学年以上)

『ナイルに死す』アガサ・クリスティ著 ハヤカワ・ジュニア・ミステリ

悪いことをした人が罰されるなんて当たり前のことですが、意外と現実ではそうもいかない場面を目にします。そんなモヤモヤを抱えたときには、ミステリで気分転換が一番です。なにせ悪行を働いた犯人が見つかるのは確実なのですから。中でもミステリの女王クリスティが描く名探偵ポアロのシリーズは、一癖あるお髭の老探偵の華やかな活躍が見所です。

自称「最高の探偵」エルキュール・ポアロが旅先のエジプトで出会った裕福な女性は、夫と新婚旅行中にもかかわらず不安を抱えていました。どうやら夫の元婚約者が二人の行く手に現れて、夫婦に嫌がらせをしている様子です。新婚夫婦は追跡者を振り切るためにナイル川を遡る客船に乗りますが、そこで事件は起こります。果たしてポアロは船内にいるはずの犯人を見つけられるのでしょうか?

何度か読み返しているのですが、犯人を覚えていてもトリックを忘れていて、毎回謎解き部分ではうならされます。今回おすすめした本は小中学生にも読みやすいよう翻訳し直されていて、難しい漢字には読み仮名が振ってあります。挿絵は好みが分かれると思いますが、ポアロがお洒落さんで気を使った服装をしているのは原作通りです。

『ナイルに死す』は2022年に新作映画として公開された『ナイル殺人事件』の原作でもあります。お話が気に入れば、どんな映像になったのかを観てみるのも一興かもしれません。

親と気持ちがすれ違う日に読みたい本(中高生以上)

『夜の光』坂木司著 新潮文庫

添え木に紐を結ぶのは難しいものです。最初のうちは植物が添え木を頼りに伸びていけるようにすぐ近くに結びます。しかしある程度苗が育つと紐を緩め直さねばなりません。でないと茎に食い込んで生長を妨げるから。

親子の関係も何度か結び直しが必要で、いくつになっても一筋縄ではいきません。親が良かれと思うことが子どもを傷つけることは沢山あって、しかしそんな息苦しさから逃れる方法はないと思ってしまう。だって生活の全ては親に頼り切りで、自分はまだ大人じゃないから。

でも、本当に?

この本に出てくる四人の高校生は、ゆるい部活の同級生というだけの繋がりからふとした切っ掛けで一歩踏み込んで、秘密を共有する仲間として一年近くを過ごします。そして学校生活で起こった謎を協力して解いていくうちに、それぞれが心の一部を預けられる頼もしい相手に変化していきます。四人中、親と折り合いが良いのは一名のみ。理由も様々です。

この著者の話が素敵なのは、そんな親子関係を誰かの改心でめでたしめでたしにしてしまわないところです。フィクション(作り話)なのだから大団円でも良いでしょうって思うところですが、良くも悪くも人の性根はそんなに簡単に変えられないもの。さて、この四人の「戦う」高校生は、果たしてどんな方法で生き延びたのでしょうか。

自分に特別な才能が無いと思った日に読みたい本(中高生以上)

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀 祥伝社

何者かでなくてはならないって、どれだけ強烈な呪いでしょう。

よく光る板一枚で世界と繋がれるからこそ毎日のように注がれる、見も知らない人たちが「活躍」する姿。それに引き換え自分は、とちらりとでも考えないでいられるのは、よほど自信過剰の人かそれとも悟りを開いた賢者のどちらかでしょう。

この小説に出てくる六人の若者は、いずれも斯界の天才と呼ばれたことのある子供ばかり。小説家・料理人・バイオリニスト・画家・棋士・映画監督。幼いときから期待を背負う俊英たちは、ある実験のために集められます。それはAI・レミントンとの対話を通じ、たぐいまれなる才能をサポートするプロジェクトでした。しかし、実際にレミントンとのセッションに赴くやいなや、六人は計算力と集合知に裏打ちされたAIの力に自分の限界、己の消費期限を嫌というほど思い知らされます。

自分が何者でもなくなる予感に戦慄しながら過ごす実験期間、たった十一日が永劫にも思えます。肺腑をえぐるような試練が終わったとき六人それぞれが得たものに、あなたなら納得がいくでしょうか。

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本の紹介文はあらすじだけでなく、読み手が心の中に秘めている世界やものの見方を垣間見せてくれますね。各教室にて絶賛展示中です!

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