弱きを助け強きをくじく一族(33)
毎週行く喫茶店、僕の行く時間と座るところは決まっている。
その時間に動きのゆっくりとした40歳位の男の人が入ってくる。
時々マスターが近づいて、
その人の座る所まで手を取って連れて行く。
帰る時もドアの所まで行き、
外にちょとした段があるので一緒にそこまで行く。
聞くところによると、
その人は視野が狭く、
特に暗くなる時間や天気によっても視野が極端に狭くなる。
手を添えないと机にあたったり椅子につまずいたりするらしい。
マスターの動きを見ていると店の仕事のためというのでは無く、
自然に弱者に対するいたわりの様なものが感じられる。
このファミリーは正義感が強くチョット血の気も多い様で、
このマスターの兄は強きをくじき弱きを助けるためか、
訳あって何人かの○○○の人をのばしてしまって、
一時期九州まで逃げていたと聞いた事がある。
弱者に対して強者が不当な事をしていると、
じっとしていられないファミリーらしい。
少し前此処で待ち合わせをしていた者が、
初めての場所だったので、
早い目に車で着き降りて駐車場でうろついていた。
店の中から女の人が出てきて、
どこに行かれるのか、道に迷ったのではないかと聞かれたという。
この店での待ち合わせのことを言うと、
店の中に戻られたと言う。
彼は後で感じ良かったあの店の人は、
道に迷っていると思いわざわざ出てきてくれたと少し感じ入っていた。
この女の人はマスターの奥さんで、
この方も親切な思いやりのある方である。
又、以前日本で中学の英会話の講師をしている南米の人が、
それを終えてドイツに留学か何かするつもりが、
なかなかビザが出ないので、
僕が外国人の知り合いが多いと思い、相談に乗ってほしいと言われ、
その店で会ったが大使館の人の知り合いもいないし何も出来なかった。
その人はその国で一番良い大学をトップで出て、
自分はすごいので日本でも優遇されて当然の様な態度で、
良い印象はしなかった。
けれどもこのファミリーは彼も日本では弱者と思い、
色々サポートしてあげていたらしい。
結局彼はドイツには行けた。
僕も途上国で成績優秀で日本のある国立大学に留学し、
そこで博士号まで取った人を知っているが、
彼らはプライドが高く選ばれた者は、
高待遇を当然受けられると思っている人がいる。
国へ帰ってその国に尽くすのではなく、
自分が優秀で発展国で上位の生活を望んでいるだけで、好きになれない。
このファミリーは彼らも弱者とみなし親切なのだが、
弱者に対するこの態度は、氏素性から来ていてプライドがそうさせるのか、
(氏素性という言葉は僕は好きではないのだが、
このファミリーのだいたいのことを知っているので)
そのファミリーがいたわりや優しさが一番大切だと言う家訓でもあり、
何代にもわたり伝えられてきたのか非常に興味深い。
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