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シカク運営振り返り記 第35回 2店舗経営と不機嫌なB(たけしげみゆき)

2017年7月、千鳥橋に移転したシカクと、中津のかつてシカクだった物件に誕生したギャラリー・ハッカクの営業が始まった。

ハッカクではひとまず、毎月1本、2週間ほどの会期の展示をやることにした。期間中は当時の店長Bが、千鳥橋から中津まで、自転車で片道30分ほどの距離を通う。
それまで2階の住居から1階のシカクまで片道5秒でもロクに出勤しなかったBに、はたしてそんな長時間の通勤ができるのか不安だった。だが彼は意外に不満も言わず毎日出かけていった。
シカクの運営はBの出る幕がすっかりなくなっていたが、ハッカクは自分がやらなければ動かない。そのことがやる気に繋がっているのだろうと私は考え、嬉しく思っていた。

ハッカクの展示は、2人で相談して企画を決め、Bが展示のスケジュール管理と店番、私が告知物やグッズのデザインという分担で行っていた。
スケジュール管理といっても、展示は月に1本だけだから、会期を調整するのも制作物の締切を決めるのも難しいことではない。またBは他に特に仕事もなかったため、店番中は作家さんとお喋りしたりゲームをして過ごしているようだった。

一方の私は、大きくなったシカクの運営でますます多忙になっていた。面積が広くなったぶん商品を増やして、新しくできたギャラリールームの予定を埋めて、今決まっているイベントの準備もして、日々の接客や通販作業もやって、ハッカクのこともして……とにかくやることは無限にあった。
ワークバランスは以前よりいっそう崩壊していたが、私はBが楽しそうにしているのを「友達ができてよかったなあ」と心から喜んだ。彼が以前から友達が少ないと悩んでいたからだ。

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