『スパイファミリー』とミッドセンチュリーモダンの家具
ビジネスに役立つデザインの話
ビジネスに役に立つデザインの話は、こちらのマガジンにまとめています。
どうビジネスに役立つのか?
今回は、ミッドセンチュリーモダンとは何かをなんとなくでも理解することで、さまざまなところで見かける家具や照明が、ミッドセンチュリーモダンのものであると知ることができ、理解することのみならず、表現する側になったときにも使える知識となるから。
漫画『スパイファミリー(Spy × Family)』
漫画『スパイファミリー』は、週刊少年ジャンプに連載されている漫画です。スパイ、超能力者、殺し屋がそれぞれの素性を隠して家族になるというユニークな設定です。漫画の表紙では、いつもミッドセンチュリーモダンを代表する椅子が登場しています。
アニメ『スパイファミリー』
この漫画は、現在(2022年4月)、テレビなどでアニメになって放映されています。今回は、アニメに出てくるシーンからミッドセンチュリーモダンの家具を紹介していきます。
ミッドセンチュリーモダンとは?
ミッドセンチュリーモダン(MCM)は、第二次世界大戦後のアメリカにおいて、およそ1945年から1969年まで流行した、インテリア、プロダクト、グラフィックデザイン、建築、都市開発などを含むデザイン運動です。この言葉は、1950年代半ばには早くも使われはじめ、カーラ・グリーンバーグ(Cara Greenberg)が1984年に出版した『ミッドセンチュリー・モダン:1950年代の家具』でデザイン運動として定義しています。ミッドセンチュリーモダンの美学は、この時代のモダニズム運動に沿ったモダンなスタイルと構造です。シンプルでクリーンなラインと誠実な素材使いが特徴で、一般に装飾的な飾りはすくない。
モダニズム運動
モダニズムは、第一次世界大戦以後の1920年代を中心にした前衛的な動向を指す芸術運動です。この運動では、従来の19世紀芸術に対して、伝統的な枠組にとらわれない表現が追求されました。都市化、新技術、戦争など、新しく出現した産業世界を反映した新しい形態の創造を目指したものでした。その動きの方向は、陳腐化したと捉えた伝統的な形式から脱却を目指したものでした。1934年に詩人エズラ・パウンド(Ezra Pound)が発した「Make it New(新しくする)」という言葉は、この運動を象徴しています。
ミッドセンチュリーモダンの誕生
第二次世界大戦が終わると、自国を戦場としなかったアメリカは、世界経済や生産能力、機械施設に世界をリードする強豪国になっていました。戦時中に軍需産業が生み出したプライウッド(成型積層合板)やFRP(ガラス繊維強化プラスチック)などの新しい技術が世に出始め、チャールズとレイのイームズ夫妻、ジョージ・ネルソンらデザイナーたちは、これらを家具に応用しました。
『スパイファミリー』はミッドセンチュリーモダンがお好き
漫画『スパイファミリー』は、ミッドセンチュリーモダンな家具が好きで、表紙には毎回ミッドセンチュリーモダンの代表的な家具がキャラクターとともに登場しmす。
1巻目:ル・コルビュジエのLC2
建築家でもある著名なル・コルビュジエ(ら)によるデザインのLC2。非常に有名でレプリカが市場に出回りまくっているので、安いのからちゃんとしたものまでと玉石混淆状態です。ちゃんとしたものを購入するなら、Cassina Ixc.から購入するのが安心です。74.8万円から。
LC2は、最小の構成で最大の快適性を実現することを目的としてデザインされたソファで、「グランコンフォール(GRAND CONFORT)」とも呼ばれています。スティールパイプのフレームに背、座、アームのクッションを落とし込んでいくという簡単な構造です。
2巻目:ジョージ・ネルソンののマシュマロソファ
ジョージ・ネルソン(George Nelson)(1908-1986)は、アメリカの工業デザイナー。ハーマンミラー社のリードデザイナー。
アニメ『スパイファミリー』に登場するミッドセンチュリーモダン
漫画に登場するミッドセンチュリーモダンの家具はアニメにも登場してきます。
LC2
1巻目の表紙にも出てきたコルビュジェのLC2(3人がけ)です。
ルイス・ポールセン PH5
ルイス・ポールセンは、1874年創業の北欧デンマークの照明メーカーです。このPH5(写真はビンテージもの)は、ポール・ヘニングセンによるデザイン。彼のイニシャルを取ってPH。光源が直接みえないように設計されており(グレアフリー)、眩しくないのに、食卓などをきれいに広く照らしてくれます。コードが反射によって色がついてみえるようにまで設計されています(わたしも使っています)。
グローブ・トロッター
これはミッドセンチュリーモダンではないのですが、イギリスの創業1897年のラグジュアリーラゲッジメーカーのグローブ・トロッターのスーツケース(キャリーオン)です。紙、綿、木材パルプからなる素材、ヴァルカナイズドファイバーボード(Vulcanised Fibreboard)を使ってスーツケースを作っています。ヴァルカナイズドファイバーボードは、軽くて耐久性があり、その素材とデザインはひとめでグローブ・トロッターとわかるアイコニックなものです。
映画『007』のパートナーブランドにもなっており、それもあって(スパイ関連?)で、使われたのかもしれません。第二次世界大戦で活躍したウィンストン・チャーチルもグローブ・トロッターを愛用していました。
まとめ
今回は、これらが使われている意味、まで遡るようなものではありませんでした。しかし『スパイファミリー』に出てくる家具は、どれもミッドセンチュリーモダンの代表的な家具で、これらがミッドセンチュリーモダンのものであり、その背景にモダニズムとアメリカが勢いづいた時代、それに呼応したヨーロッパのデザイン動向など、掘り下げていけるものが数多くあります。デザインの知識は世界を拡張してくれます。漫画やアニメにもデザインやアートの情報が何かと含まれていて、とてもおもしろいです。これからもそんな情報も紹介していきます。
参照
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