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“プロビデンスの目”とは何ぞ?

プロビデンスの目

プロビデンスの目
原作: Oden ベクタ: Sarang - Emblem-christian.svg:  次のものによる: Rursus, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12618277による

プロビデンスの目(Eye of Providence)とは、目が描かれたキリスト教における意匠です。プロビデンスはキリスト教の摂理(神意、神の導き、神業)という意味で、プロビデンスの目は神の全能の目(all-seeing eye of God)を意味しています。光背(こうはい/halo)や、三位一体の象徴である三角形としばしば組み合わせて用いられています。


使われている例

中世からルネサンスにかけて以降、三位一体の象徴としてデザインが用いられてきました。現在でもアメリカ合衆国の国章の裏面をはじめ町や大学の紋章、アメリカ合衆国ドルをはじめとする通貨のデザインで用いられています。

アメリカ合衆国の国章の裏面。未完成のピラミッドの基部にローマ数字で「MDCCLXXVI」(1776)と書かれています。Annuit cœptisは「創造主の摂理は我々の取り組みを支持した」を意味するラテン語。NOVUS ORDO SECLORUMは、て「時代の新しい秩序」という意味で、1776年の新しいアメリカ時代の始まりを象徴しています。 
Ipankonin - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3454744による


1882年に完成したアルゼンチンのサルタ大聖堂のプロビデンスの目
DrDread - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19747701による


1525年にヤコポ・ダ・ポントルモの描いたエマオの晩餐。キリストの上にプロビデンスの目が描かれている。
ヤコポ・ダ・ポントルモ - MwHPzvKeSKDjPA — Google アートプロジェクト, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=13519745による


フランス人権宣言の版画
https://www.parismuseescollections.paris.fr/fr/musee-de-la-vie-romantique/oeuvres/portrait-du-marechal-de-saxe, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=65758による


ウクライナの500フリヴニャ紙幣の裏面
パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1683938


エストニアの50クローン紙幣の表面。Käina教会がデザインされている。
EEK banknote, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=453283

陰謀論

フリーメイソン陰謀論では、三角形に目を配したプロビデンスの目は、フリーメイソンの象徴とされることが多々あります。この紋章がUSドル紙幣に描かれていることはアメリカ合衆国がフリーメーソンリーの支配下にある証拠だ、と唱える者もいます。(ダン・ブラウンの小説『天使と悪魔』にもこれに近いことが書かれています。)

初期のフリーメーソンリーで用いられたプロビデンスの目
パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=782649

しかし、フリーメイソンによる「目」の一般的な使用は、国璽の作成から14年後のことでした。 さらに、国璽の様々なデザイン委員会のメンバーの中で唯一のメイソンはベンジャミン・フランクリンであり、彼のアイデアは採用されませんでした。 同様に、さまざまなメイソン団体が、印章の作成との関係を明確に否定しています。(*2)。


また、イエズス会の修道士であったインゴルシュタット大学教授のアダム・ヴァイスハウプト(Adam Weishaupt)が、1776年に創設した秘密結社、イルミナティ(Illuminati)の紋章であるとされることもありますが(ダン・ブラウン『天使と悪魔』)、大英博物館にあるイルミナティ文書の原本や、メンバーが使用していた場所のデザインにプロビデンスの目は存在していません。(*1)


参照

※1


※2


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