CHANELの印刷されていない本 & エンボス加工
ビジネスに役立つデザインの話
デザインについて知ることでビジネスに役立つ種類の話をこちらのマガジンに収めています。
CHANELの印刷されていない本
シャネルが、オランダ、アムステルダムのブックデザイナーのイルマ・ブーム(Irma Boom)にデザインを依頼して2013年に作った本、“No. 5 Culture Chanel”は、インクが使われていない本です。インクを使わずにどうやって?と思われるかもしれません。印刷するかわりに本に施されているのは、エンボス加工というもの。簡単にいえば、紙の一部を盛り上がらせるしました。
なぜ、印刷されていないのか?
圧巻のデザインですが、そもそもなぜ、印刷されていないのでしょうか? 勘の良い方はもう気づかれたかもしれません。ブーム氏がこのアイデアを思い浮かんだのは、プロヴァンス地方のグラース(Grasse)という村で、シャネルのチームがバラを摘んでいるところに同行したときのことでした。
「目に見えない魅力・存在」を伝えるために、目に見えないものを紙の上に載せたのが、この本の加工の理由です。(目に見えますが。しかしインクを「目に見えるもの」として捉えるならば、それがないことがインヴィンシブルな魅力を象徴するともいえるでしょう)。ちなみに本の厚さは5 cmです。香水の№ 5の数字にちなんだものです。もひとつちなみにブックケースが黒ですが、これもシャネルにリトル・ブラック・ドレスにちなんでいます。
イルマ・ブーム(Irma Boom)
イルマ・ブーム氏のデザインした本の、なんと2割がMOMA、ニューヨーク近代美術館のパーマネント・コレクションに収蔵されています。ブーム氏が作る本は、読むためと言うよりは、もはや鑑賞するための本として扱われる、もはやアート。(本にはそれを嫌がっていますが)。ブーム氏は、シャネルの本を完成させるために、パリのアパルトマンに滞在し、ココ・シャネルの人生を研究しました。
お彼女のオフィシャルサイトはこちら。
この本に関する動画もあります。
エンボス加工
ブームはエンボス加工を活版印刷機を使って行っていますが、エンボス加工は、マグネシウム製の凹版と樹脂製の凸版の1セットを用いて紙面に凹凸をつけて、凹凸をつけています。エンボス加工は、別名「浮き出し加工」とも言うのですが、それは、浮き上がっているからです。では、逆に浮き下がっている場合は、なんと呼ぶのかというと、こちらは「デボス加工」です。
メゾン・マルジェラの名刺
ご覧の通り、メゾン・マルジェラの名刺もエンボス加工とデボス加工だけです。わたしも持っていたんですが、ちょっと見つからず(泣)。
オーセンティックな日本の名刺にも
名刺は日本発の習慣ですが、オーセンティックな名刺は、紙にはケント紙を使い、小さくエンボス加工が施されていることが多いです。エンボス加工が意味することは何でしょうか? じつはエンボス加工は高価な加工です。型を作らないといけないし、大量に使ったあとは摩滅してしまうため、また作り直す必要も出てきます。以前にも触れましたが、制作が高価なものが示すものは、「ちゃんとしている」ということです。
こういうメッセージが、エンボス加工には含まれています。
まとめ
高価のブランドになるほど、メッセージには、“良いものがわかる人なら、わかりづらいが素晴らしい差を気づいていただけるはず”というニュアンスを含んできます。紙の質や種類、書体、加工。たとえば透かしの入った紙など。
エンボス加工もその一つ。印刷がないのでわかりにくい。そして高価。エンボス加工がもつ意味を理解できると使ったり、解読したりとビジネスに役立つのではないでしょうか。
参照
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