株価とデザイン:時価総額Top 5の日本企業とそのロゴ
ビジネスに役立つデザインの話
ビジネスに役に立つデザインの話は、こちらのマガジンにまとめています。
株価とデザイン
デザインやブランディングを企業に提案しているなかで、ブランディングはどれだけ企業の売上や株価に影響を及ぼしているのか、調べたことがあります。結論は、がっかりされるかもしれませんが「わからない」というものでした。しかし、これ行動経済学にも通じる結論でもあります。「株価の予測など基本できない」というのが行動経済学の一部の学者の結論でした。デザインやブランディングを定量的に計測することはできません。できても一部です。それはファクターとして扱えないことを意味しています。しかしひとつ興味深いことがわかりました。
ということです。上場企業というのは、企業のエリートです。もちろんあえて上場しない企業もあります(たとえば虎屋とか)。それでも、「上場できる」ということは、企業として優秀な成績を認められたということを意味しています。にもかかわらず、ロゴやウェブサイトのデザインの質が非常に低い、すくなくとも高くない企業があります。これが意味するのは、
ということです。そんなことしなくても、上場できる売上や成長を果たしている企業があるということです。ここから、デザインやブランディングはさほど重要ではない、という考えが生まれるわけではありません。言えるのは、
ということです。では、どんな企業がデザインやブランディングが必要ないのでしょうか。こたえは意外なほど簡単なものです。競争しなくて良い企業です。
ブルーオーシャンにいる企業にブランディングは必要ない
ブランディングが必要なのは、競争相手がいる市場にいる企業です。たとえるなら、恋愛において、ライバルがいるからおしゃれをしたり、香水をつけたり、高い時計を買ったりするけれど、ライバルがいないなら、それほどまでには頑張って、おしゃれをしないようなものです。
余談ですが、結婚すると人は、テストステロンの数値がさがります。テストステロンとは、男性ホルモンで、性欲や競争心に関連したものです。そして離婚すると再び増えるそうです(笑)。
さて、この流れからなら、「ほらこんなにイケてないのに、上場している企業があるでしょ?」という例をいくつか紹介したいところです。しかしそのためには、その企業がブルーオーシャンにいるかどうかも同時に示す必要があり、軽い論文くらいの労力が必要になってきてしまいます。そして、例示したところで、投資に役立つ情報でもなかったりします。というわけで、今回は、日本とアメリカの時価総額ランキングTop 5の企業とそのロゴを紹介して、「デザインと株価」の繋がりをなんとなく認識するということにしたいと思います。
日本の時価総額ランキング Top 5
2022年4月20日現在の日本の上場企業、時価総額ランキングTop 5。
※時価総額とは、株価×株数です。
※参照したのは、日本経済新聞の時価総額上位ランキング。
1位:トヨタ
創業:1937年
時価総額:約36.8兆円
株価:2,258.5円
ロゴデザイン:日本デザインセンター
トヨタは、2020年にワードマーク(TOYOTA)を捨て、フラットデザインにしたこのシンボルマークのみをビジュアル・アイデンティティとしています。Toyota アメリカのウェブサイトではまだワードマークも併記しています。
2位:ソニー・グループ
創業:1946年
時価総額:約14.4兆円
株価:11,430円
ロゴデザイン:黒木靖夫(ソニー)
3位:NTT
創業:1985年
時価総額:約13.7兆円
株価:3,792円
ロゴデザイン:亀倉雄策
4位:キーエンス
創業:1974年
時価総額:約13.0兆円
株価:53,590円
ロゴデザイン:–
5位:三菱UFJ
創業:2006年
時価総額:約10.2兆円
株価:774.4円
ロゴデザイン:日本デザインセンター(永井一正)
まとめ
ちなみにアメリカの上場企業のナンバー1は、Appleで、時価総額は2022年4月現在で、時価総額2.73兆ドル、日本円(1ドル128.5円)に換算すると346.95兆円。日本で1位のトヨタの時価総額の9倍以上で、文字通り桁が(1つ)違います。
おもしろいことに投資とブランディングが関連してくるかというと、実のところ投資家は、ロゴのデザインやブランディングなど(私見ですが)まったく見ていません。見ているのは、シンプルに数字です。
そんなわけで、タイトルのわりに、株価とデザインというものをきれいに直線で結べるものが何かであるという話はできませんでした。わたしは、当初株式投資をする際に企業のブランディングもチェックして、簡単に採点し、その数値と株価の相関関係をみつけようとしてみました。が、無駄におわりました。それでも、得たのは、冒頭で触れた「ブルーオーシャンの企業はブランディングを必要としない」という仮説と「ブランディングによって、株価や売上を保証することはできない」という仮説を得ました。そして裏を返すとこうまとめることもできます。
卑近な喩えながら、やっぱりわかりやすいのが「モテ」です。ライバルが多い条件なら、清潔にして、身だしなみや品性を良くし、金なら見た目なり、魅力になりうるものを身に着けていく必要があります。ほんとうは、「ほら、こんなにダサいのにすごい時価総額でしょ!」という例も見せたかったのですが、ちょっと行儀がわるいかもということで、こんな内容となりました。
参照
https://www.underconsideration.com/brandnew/archives/new_logo_and_identity_for_toyota.php
https://www.dezeen.com/2020/07/22/toyota-rebrands-flat-logo/
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