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フォントと書体ってどう違うの?

ビジネスに使えないデザインの話

ビジネスに役立つデザインの話をメインに紹介していますが、ときどき「これはそんなにビジネスには使えないだろうなぁ」というマニアックな話にも及びます。今回は、ビジネスに直接使えなさそうな話です。でもおもしろいです。


フォントと書体ってどう違うの?

データだとフォント?活字が書体?

デザイナーではなくても、フォントという言葉は、今では知っていたり、使っている方は少なくないのではないでしょうか?ひとえにパソコンが普及し、多くの人が「書体を選ぶ」という行為をする頻度が増えたからでしょう。

今の一文で、わたしはフォントと書体をまるで一緒の意味であるかのように扱いました。が、実際みなさん、意味が違うのか、同じなのか、疑問を抱きつつも、調べてすっくりさせるほど興味もない……くらいに思っているのではないでしょうか。実際、どっちでもいいです。あまりそこを厳密に使い分ける必要は、書体デザイナーでもない限り、ありません。でも、気がついたら、なんか気になる!という方のために、その違いを今回、説明したいと思います。

書体とは?

書体は英語にすると“Typeface”になります。書体は、共通のデザインを持つ特定のグリフ(グリフ(glyph)とは、アルファベットとそれに対応する数字や句読点など)の集合のことです。このグリフ、ヒエログリフのグリフと一緒です。

例えば、Helveticaという書体

Helvetica Neue(Neueはドイツ語で新しいという意味です)

Helveticaという書体は、共通のデザインを持ったアルファベットと数字と記号です。Helveticaも書体、Futuraも書体です。ではフォントは?

フォントとは?

フォントは、英語では、“Font”です。フォントとは、書体の中の特定のグリフの集合のことです。Helveticaという書体のうちのでRomanという太さのHelveticaは、フォントです。Helveticaという書体ののうちのBlackというもっと太い書体もフォントです。

活字の世界では、文字は大きさよってデザインが変わります。小さいと読みにくくなるので、潰れない工夫が施されます。大きいとバランスが変わってくるので、それも調節されます。結果、同じHelveticaでも12ポイントのHelveticaと10ポイントのHelveticaは別もので、それぞれが別々のフォントです。フォントとは、デザインが共通の書体のなかで、太さや大きさが異なる集合です。書体の中にフォントという集合があることになります。


印刷は小さな金属のかたまりだった

このように文字には物体がありました。

もともと印刷は活字を使って印刷されていました。これがいわゆる活版印刷です。わたしたちが、超絶気軽に「超絶気軽に」と打って、そのまま文字になって、それがプリントできてるのはDTPが発達した現在でのことであって、パソコンがない時代では、このような金属の塊をきれいに並べて、それにインクをつけて、がっちゃんこ!紙にくっつけて印刷をしていました(今でも存在しています)。

ということは文章をつくるときに、「使う文字を選んで集める」という行為が必要だということです。もとの文章を見ながら、職人たちが、金属の文字を集めていくのですが、このとき職人たちは集めた文字をジョブケース(Job case)というそこの浅い木の箱に入れていました。

これがジョブケース
 source: The Difference Between Font and Typeface

このケースをつかって活字を職人は組んで(だから「文字組み」という)いたわけですが、スムーズに作業をすすめるために、上記のようにジョブケースは大文字、小文字、数字などをわけていました。そして大文字はケースの上部にあり、小文字はケースの下部にあったため、その名残で、現在でも大文字のことを「Uppercase(上部のケース)」、小文字のことを「Lowercase(下部のケース)」と呼んでいます。

間違えないよに活字は種類ごとに別々に保管されていましたし、こうしてジョブケースに移す際も違う種類(同じ書体でも、太さやサイズが違う)は別のジョブケースに入れていました。

これが「書体」と「フォント」の違いです。つまり職人たちが困らないように整理して分けていたので、書体とフォントは別の意味なんです。現在では、フォントと書体をわざわざ厳密にわけて使う場面がほとんどありません。だから書体デザイナーでもなければ、同じ意味で使って良いわけです。しかし同じ意味で使っても良いものにどうして2つの名前があるのかというとこういう歴史があったし、厳密にいうと違うからなんです。それでも「それはフォントじゃないぜ!書体だぜ!」なんて指摘なんてしなくても良いわけです。


参照



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