鬼瓦ってなんだ? その種類と起源
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鬼瓦って何?
前回「屋根の12種類のメリットとデメリット」で屋根の形や素材について触れました。書いてからいっそう歩いていると家々の屋根に目が行くようになったのですが、そうすると気になってくるのが「鬼瓦」。あれ、なんでちょっと特殊な形なんだろう?ということで今回は鬼瓦について解説していきます。
鬼瓦
鬼瓦とは、瓦葺き屋根の端、大棟(おおむね)・降棟(くだりむね)などの末端に設置される装飾性のある瓦のことです。大棟や降棟などの「棟(むね)とは、屋根と屋根が交わる稜線です。棟は屋根のつなぎ目なため、雨漏りの原因になりやすく、ゆえに重要なポイントでもあります。
大棟とは、屋根の一番上の棟であり、降棟は「大棟か屋根の傾斜に沿って瓦積の棟」。その他にも「隅棟(すみむね)」という屋根と屋根の境界線にあたる傾斜した棟もあります。
鬼瓦は、これらの棟の端に設置されます。なぜこの鬼瓦が鬼などの形になったのか、諸説ありますが、Wikipediaで紹介されているものは、古代ローマ帝国のパラミラにみる厄除けのために建物の入口に設置されたメドゥーサが、中国に伝来し、奈良時代に日本に伝わり、普及したというもの。古代ローマにおけるメドゥーサを入り口に設置する文化を「ゴルゴネイオン(Gorgoneion, 複数形Gorgoneia)」)と言います。
ゴルゴネイオン
ゴルゴネイオンとは、ゴルゴーン(ギリシア神話に登場する醜い女の怪物。その名は「恐ろしいもの」の意。ヘシオドスの『神統記』やアポロドーロスによると、ゴルゴーンは海神ポルキュースとその妻ケートーの娘で、ステンノー、エウリュアレー、メドゥーサの3人からなる姉妹)の首をかたどった絵や彫刻。
鬼師
鬼瓦を作る瓦職人を鬼師(おにし)と呼びます。2021年時点で全国に70人から80人の鬼師がいるようです(※1)。そのうち約50人は三河国(愛知県)の三州瓦(「さんしゅうがわら」は、愛知県で生産されている粘土瓦。石州瓦(島根県)、淡路瓦(兵庫県淡路島)と並ぶ「日本三大瓦」の一つ。)の製造地域を拠点としています。
鬼瓦の種類
鬼瓦は、鬼の顔以外で棟瓦の端部に付けられたもの全般を指しています。そして多くの種類があります。その一部を紹介します。
経の巻一文字
「経の巻」とは、獅子口の上部に付いている筒状のもの。お経の巻物に似た形状からの名称で、寺院建築に用いられる鬼瓦です。
カエズ跨
「カエズ」とは、鬼瓦の中では簡素な形状のもの。海津形鬼(かいづがたおに)ともいいます。鬼瓦の真ん中、凹んだ部分を「又ギ」(またぎ)と良います。
数珠掛鬼面一文字
下が直線の鬼瓦を「一文字」と呼びます。
怖い建築の装飾として「ガーゴイル」もある
ガーゴイル(英: gargoyle)は、雨樋(あまどい)の機能を持つ怪物などをかたどった彫刻です。主に西洋建築の屋根に設置され、雨樋から流れてくる水の排出口としての役割を担っています。英語のガーゴイル(gargoyle)は、フランス語のガルグイユ(gargouille)に由来しており、その原義は「のど」(ラテン語: gurgulio)。ガーゴイルについてはまた今度深く掘り下げた話をしたいと思います。
まとめ
諸説あるものの、日本の鬼瓦の起源は、古代ローマ帝国のゴルゴネイオンかもしれないという説は、世界の有り様を広く、深く感じさせてくれます。機能だけれであれば、これほど凝った作りのものを設置する必要はなく、現代ではどんどん設置されなくなりつつあります。そもそも瓦葺き屋根も減ってきています。そんななかで瓦葺き屋根を見かけたら、ぜひ鬼瓦を観てみたいわけです。どんな種類のものが使われいるのか。特にお寺の屋根と鬼瓦は注目したいところです。
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参照
※1
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