自分史的なクリッピング史料

今日はイランの大統領の死とか、ダルビッシュの200勝達成、そして相変わらずの大谷さんさよならヒット、とメディアを賑わすトピックスはたくさんあるけど、その中でも結構以前から気になっていたエレキソルト・スプーンの発売の話もメディアで取り上げられた。減塩対策の解決策の一つとして、開発された新技術。スプーンにのせた食べ物を通じて微弱な電流が流れ、電流の働きで食べ物の中に分散したナトリウムイオンを舌の近くに引き寄せ塩味を強く感じるという。価格は19800円とちょっとお高めだけど、減塩対策をしなければならないという人には朗報だろうか。自分も塩分は控えるように医者から言われているにもかかわらず、普段の食事はやはり塩味が恋しくついつい塩を振りかけるのが定番。それではいけないと思いつつ。でもこうした技術が大きな課題の解決策を提示していくというのはやはり、ダイナミックさを感じる。使い方にはいくつか注意点があるようだけど、これも改善していくのではないだろうか。

2023年3月15日 日経 FINANCIAL TIMES  SF文学で「戦争予測」

SF作家は未来を予測する力があると評価される・・・というリード文で始まる。手塚治虫や藤子不二雄もロボットを介して、未来を描いていたのだろうから、その発想やら工夫やら感心することが多かった。こうした作家たちは、潜水艦やインターネット、携帯電話、自動運転車等々を予測し現実となっている。勿論早すぎる予測も多かっただろうし、テレポーテーションや空飛ぶ車はまだ実現していない。

ところが、急速に進展する技術によって、政策立案者や戦略家は、加速化する技術によって迫りくる未来を想像するためにSF作家の力を借りるようになったとある。英国防省ではSF作家に短編小説の執筆を委託したらしい。その他にも米国、フランス、カナダ、オーストラリアの軍も同じように思考実験を実施しているようで、「フィクショナル・インテリジェンス」という需要が生まれていると。

英国防省の顧問は、SF作家の重要性を強く訴え、国防における洞察力を磨きイノベーションを刺激するためにその創造性とビジョンを生かす必要があるとしている。確かに制約のない作家の方が、発想の枠は多少広いのだろうけど、それでもその時点で考え得る範囲でもあるだろうから、どちらかと言えば、組織内ではその自由度を制限する力が大きいのだろうと容易に想像できる。

そして、読み物としてはお硬いお役所の文章よりは格段に読みやすいものとなっている筈だし、とても興奮と躍動感を感じることができるものとなっていることは間違いない。この短編の中で、センサーが搭載された自律運転する車両集団が敵地を探索し、前進基地に物資の補給を可能とする為に、車両ごとに処理・分析する「エッジ・コンピューティング」の開発について詳細を説明していると。その他にも技術によって能力が増強された高性能兵士は、コンタクトレンズで司令部の指示を読み、ボディスーツの触覚パルスに反応して、痛みを緩和する装置等を起動する。痛みを緩和してまで戦えということでもある。士気が上がるのか、それともある意味で人間であることそのものを捨てるのかまで行き着きそうな発想である。今では自律型の自爆型無人機やドローンも戦場に投入されているようだから、戦争に新技術の投入といういのは、避けて通れない未来なのだろうか。

この記事の記者は、量子コンピューターと気候変動によって引き起こされる地政学的な激変を取り上げた作品に最も関心が向いたとある。量子コンピューターを携えた敵軍に英国軍は圧倒的な不利に立たされる。もう一つは、エネルギー資源の支配をめぐる争いを描いていて、化石燃料の生産を維持するために、石油会社の傭兵がナイジェリアの内紛に介入するというもの。まさにありそうなシナリオ。企業が戦争に介入するという事態。或いは、中国がレアアースの鉱物資源を確保するためにインドネシアのクーデターを支援するという話。環境問題を背景とした起こり得るシナリオ。

筆者は2つの異議を挙げている。一つは、ある著名なSF作家によれば、あくまでSF作家は自分が生きた時代の夢と恐怖と経験を反映した文学的な「うそ」を組み立てるのだという指摘。もう一つは、遠い未来に起き得るかもしれないことに注目するあまり、より差し迫った今そこにある脅威から目をそらしてしまいがちになってしまうことだと。

ウクライナ戦争も米ロの核の対立をあおる結果になるかもしれないし、今現在貧困や紛争に苦しむ世界の脆弱な地域に気候変動がもたらす混乱など、今眼前にある事実。水没する国があるかもしれないなど他人事として考えるのではなく、それによって地政学的に何らかの勢力図の変更は起こり得る。

英軍に執筆を依頼された作家は、徹底的な取材をもとに執筆したとあるので、実用的なフィクションであると自負している様子。確かな情報に基づく物語は、少なくとも読者の感情を揺さぶるには効果が大きい。日本軍による真珠湾攻撃、2001年の米同時多発テロ等は予測可能だったにもかかわらず、注目されなかったせいで見過ごされていたとも指摘している。

技術の進展と共に、予測精度が上がっているだろうし、そして未来を引き寄せ実現する力を益々増長させている。時に大きな目線で国家を見る目を醸成すると共に、生活に密着した未来を引き寄せることも大事だと思う。いずれにしても、作家というのは読者をひきつけるだけのストーリーを満を持して発表しているということだけは、読みながら感じざるを得ないという態度で目を通してみたいと思う。余り戦争の話というのは好きではないが、危機への準備等にとってはとても有効だとも思う。

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