【今日の論文】継次処理様優位な脳性麻痺幼児の描画と書字指導


概要 継次処理様式が優位な5歳の脳性麻痺児に対して、継次処理過程を強調した描画および書字の指導を行った。その結果、四角、三角などの図形を描くこと、ひらがなの3分の1以上を書くことスキルが形成された。

方法
対象児 5歳3か月痙直型脳性麻痺児。
手続き
(1)知能検査
 (a) WPPSI  言語性検査<類似><理解>が低い。動作性検査<積み木模様><幾何図形>が低い。→同時処理の弱さがある?
 (b) K-ABC 継次処理>同時処理という結果
(2)微細運動の評価
⇒以上より、継次処理の個々の要素(松原・藤田・前川・石隈,
1993)に留意し、書字指導を行うこととした。


(1)全体の関連性よりも個々の情報の順序性を重視
 (○書き順 ×図形や文字を視覚的にとらえる)
(2)聴覚的手掛かりを与える
 (とめ、まげ、はね、と音声化。手続きにおいても音声化。)
(3)継次処理が得意であることを意識させる

結果 トレーナーの指示に従い、四角・三角を描くことができるようになった。さらに、直線のみで構成されるひらがな(e.g., い、り、に)、複雑なひらがな(e.g., や、ね、せ)も書くことができるようになった。また、自主的に「チョン」「グルン」と音声化された書き順を確認するようになった。
考察 継次処理を得意とする指導は、本児の書字の遅れに対して有効であった。指導前、本児は線が乱れているという運動学的な面からの評価により、失敗経験が多く、書くことを拒否していたが、書かれたものを図形や文字として認識できる本指導により、成功経験を重視することができた。このことは他の学習面での自信につながると考えられる。今後は、より見やすく、サイズの小さい文字を描けるように指導する必要がある。また、漢字などの複雑な文字の書字における継次処理方略として、チャンキングを活用する必要がある。

感想
・まずは、自分の得意な方略を知っていることが重要。
・学習するものすべてに利用できる指導。子どもはもちろん、大人でも。
・サッと、パッと、検査がとれる人になりたい。経験不足。
・私は自分が同時処理派ってこともあって、視覚支援なら結構思いつくけれど、継次の人への支援ってあんまり考えつかないかも。もっといろんな視点から方略を考えていこう。


文献情報
山中克夫・藤田和弘・名川勝. (1996). 情報処理様式を活かした描画と書字指導: 継次処理様式が優位な一脳性麻痺幼児について. 特殊教育学研究, 33(4), 25-32.

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