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【小説】あと89日で新型コロナウイルスは終わります。

~コロナ禍で子宮がん検診が激減~

昼休憩が終わると、アキナと同僚の看護師は検査結果の確認に追われた。

(午後の外来が始まる前に終わらせねば。)

カルテと検査結果を付き合わせていった。

「カルテNo.⚫⚫ ⚫⚫さん陰性、カルテNo.⬛⬛ ⬛⬛さん陰性、カルテNo.▲▲ ▲▲さん陰性、……」

まずは、子宮がん検診の結果を確認した。

「……、カルテNo.⚪⚪ ⚪⚪さん陽性、……」

⚪⚪ さんのカルテに大きな付箋を貼った。

午後の外来が始まる前に、診察室のデスクに検査結果をクリップ留めしたカルテを重ねておいた。

医師がデスクの前に座ると、アキナは、
「⚪⚪さんの子宮がん検診の結果が陽性です。」
と伝えた。

医師は、何度も何度もカルテと検査結果を確認し、アキナに、
「電話。」
と一言いうと、アキナが固定電話の番号を押した。

トゥルルル、トゥルルル、…、ガチャ

「⚫⚫クリニックの看護師イトウです。⚪⚪さんの電話で宜しかったでしょうか。今、少しお話ししても宜しいですか。先日の子宮がん検査の結果でお伝えすることがありますので、今、医師に変わりますね。」

医師が、検査結果を伝え、「紹介状を持って総合病院の婦人科で精密検査を受けて欲しいから、何日の何時に当院に紹介状を取りに来るのか」を相談し、「その日時に必ず来るように」と念を押した。

またアキナが受話器をとると、医師が話したことと同じ内容を復唱して電話を切った。

医師はすぐに紹介状を書くと、残りの陰性のカルテもすべて確認した。

元々⚫⚫クリニックでは、検査結果はすべて診察室の中で医師から伝えていたが、新型コロナウイルスの影響で、陽性に関してはすぐに電話で患者さんに伝え、陰性の患者さんに関しては、患者さんから電話連絡があった場合のみ、電話で答えるというふうに変更していた。

アキナは、検察室のカレンダーに、
『⚫月⚫日⚪⚪さん紹介状来院』
と書き込んだ。

「もう少し早く検査ができていればねえ。」
同僚の看護師がつぶやいた。

⚪⚪さんは、3月から不正性器出血の自覚症状があったが、その後、政府が緊急事態宣言を発令し、さらに、自主的に外出を控えていたために検査をするのが大幅に遅れた。

(こんな患者さんが、日本には、いや世界には、どれほどいるのだろう。)

アキナは表情をくもらせた。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと89日。

これは、フィクションです。

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