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【小説】あと85日で新型コロナウイルスは終わります。

~アベノマスクから出た瞳には~

「私はね、2ヶ月前から厳しいんじゃないかと思っていたよ。」

夕方、今日の診察をすべて終えると院長が事務長に話しかけていた。

「私は、つい最近まで全然気づきませんでした。さすが、お医者さんは違いますね。」

事務長がやや大げさに答えると、院長は、

「マスクをしていてもね、目に生気が感じられなかったからね。みんなはアベノマスクの縮み具合いばかり気にしていたけど、私は安倍さんが倒れるんじゃないかって、ずっと気にしていた。今はゆっくり休んでほしいね。」

と言って、ボールペンをデスクに置いた。

「頑なにアベノマスクを外さなかったのは、国民の関心をマスクに集中させて、ご自身の病気を隠すためだったとか。」

事務長が少しおどけて言うと、院長は、

「それは無いと思う。」

とピシャリと言うと、立ち上がって院長室に向かってしまった。

消毒液でドアノブやソファを拭いているアキナや同僚の看護師や事務も、安倍晋三首相の辞任のニュースで持ち切りだった。

「新型コロナウイルス対策はどうなるんだろう? 何か変わるかな?」

「医師会と政府の関係はどうなるんだろうね?」

「潰瘍性大腸炎って、難病でしょ? つらかったよね?」

「今は治療に専念してほしい。」

「そうだね。」

「ほんとうにね。」

PCR検査の遅れやアベノマスクの件では、みんな散々不平不満をもらしていたが、今は一医療人として、安倍晋三という人間を気遣っていた。

「ほら、そこ‼ 3密になってる!」

事務長に指摘されて、私たちは慌てて喋るのをやめて、散り散りになった。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと85日。

これは、フィクションです。

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