【小説】あと91日で新型コロナウイルスは終わります。
~ワクチン摂取の優先順位~
「新型コロナウイルスのワクチン接種の優先順位のこと、昨日のテレビ番組でやっていたね。」
それまで無言で昼食をとっていた同僚の看護師が、食べ終わるとすぐにマスクをつけ、アキナに話しかけてきた。
『インフルエンザのワクチンと同様に、新型コロナウイルスのワクチンは、医療従事者、重症化しやすい高齢者、基礎疾患のある人、子どもとその保護者が優先される』
とある医師が話していた。
(でも、初めてのワクチンだと少し怖い気がする。)
アキナは眉間にシワを寄せた。
子宮頚がんワクチンができたときも、当初は、これでがんの一つが撲滅できたと喜ばれたが、ワクチンを打たれた少女の一部に原因不明の症状があらわれて、厚生労働省は積極的な推奨を取り止めていた。
そのワクチンに限らず、いろいろなワクチンに副作用は存在する。
人間が時間とお金と叡智を結集させて新しいワクチンを開発しても、大自然はそんな人間と戦うかのように、新たなウイルスを生み出す。
(だから、私の存在なんてちっぽけなものじゃないのか)
アキナはそう思ってため息をついた。
「なにため息ついてんのよ⁉ 大丈夫、アキナはこのクリニックにとってなくてはならない人なんだから、院長の次にワクチン打ってもらえるよ。」
アキナのため息の原因を誤解した同僚看護師が明るく励ました。
「うん。」
(彼女は、仕事以外でときどき天然ちゃんだけど、なんか励まされる)
アキナも少し微笑んだ。
新型コロナウイルスが終わるまで、
あと91日。
これは、フィクションです。
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