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【小説】あと94日で新型コロナウイルスは終わります。

~リモート講義の増加で増えたこと~

「月曜日に、当院にお越しになって、検温で38℃の熱が確認された⚫⚫ ⚫⚫様のPCR検査の結果の電話連絡が、今日あるはずです。電話は必ず医師に取りついでください。結果は皆さんで情報共有していきましょう。」

朝礼で、2日前に来院した患者さんの申し送りが行われた。

新型コロナウイルス陽性であっても、スタッフは感染対策をしていたので、濃厚接触者はいないのだけれど、その患者さんと胎児のことを考えると気が気ではなかった。

午前中も外来はバタバタしていた。

(こういうときほどミスが出る。慎重にやらなければ)

受付から問診票とカルテがまわってきて、一瞬、手が止まる。

(あー、まただ。)

アキナは思わず溜息が出てしまう。

『21歳、大学生、中絶希望』

新型コロナウイルスの影響で、リモート講義による自宅学習が増えたり、カラオケや外食など家の外に遊びに行けなくなったりしたこともあり、学生の望まない妊娠が増えていた。

家の中で男子学生と二人きりになり……。これでも、緊急事態宣言下よりは大分減ったのだけれど……。

報道では、新型コロナウイルスの重症患者を受け入れている病院や小児科・耳鼻咽喉科・内科の経営状態が悪化と報じられていたが、当院のようなお産施設のないクリニックで、初期の中絶手術を行っているところは、むしろ経営がほんの少し上向いていた。

(他人の不幸で、私の夏のボーナスが無事支払われるなんて、複雑すぎる。)

新型コロナウイルスの影響で経営が悪化した医療機関では、ボーナスが大幅にカットされていることを思い出した。

夕方、閉院間近になってから、PCR検査を受けた患者さんから電話があった。
医師に代わると、

「陰性でした。」

と結果を伝えてきたが、一度陰性の結果が出ても陽性になる場合がある。

医師は、
「熱が下がるまでは自宅で安静にしていること」
「熱が下がってから当院に電話をして、次回の来院日を決めること」
「なにか心配なことがあれば、すぐに電話連絡をしてくること」
を伝えた。

医師はそのことをカルテに記載すると、アキナに口頭で伝えた。アキナは全スタッフに口頭と申し送りノートとLINEで伝えた。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと94日。

これは、フィクションです。

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