【小説】あと88日で新型コロナウイルスは終わります。

～コロナ禍で風疹抗体検査が激減～

「今月もまだゼロだね。」

医療事務が妊婦健診の助成券や子宮がん検診の数を集計しながら、話し合っていた。

新型コロナウイルスによる受診の激減は、子宮がん検診だけではなかった。

風疹抗体検査を受ける男性もまた激減していた。

風疹はウイルスによる感染症で、妊娠中の女性がかかると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓に障害が出る恐れがある。

そのため、妊娠を予定している女性のパートナー、または、妊娠中の女性のパートナーが、当院で風疹抗体検査を受けることがときどきあった。

しかし、緊急事態宣言下では、当院では男性の入館は全面的に禁止していたため、それに伴い男性の風疹抗体検査も中止していた。

そもそも、一部世代の男性はワクチンの公的な予防接種がなかった空白期間にあたり、十分な免疫を持たない人が多いため、感染を広げやすい。

そこで、国は2019年4月から、現在41歳～58歳にあたる1962年4月2日～79年4月1日生まれの男性に対し、自治体を通じて無料クーポン券を配布。抗体検査と予防接種を進めてきたが、

認知度や認識不足に加えて、新型コロナウイルスの影響で、該当している日本在住の男性のうち、政府が目標としている風疹抗体検査数までには、あと約800万人近くも足りなかった。

妊娠している女性と胎児にとって、恐いウイルスは新型コロナウイルスだけではないのだ。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと88日。

これは、フィクションです。

コロナクライシス (日経プレミアシリーズ)

《募集中》あと100日で新型コロナウイルスは終わります／同テーマの他の作家さんの作品はマガジンからご覧になれます。