見出し画像

【小説】あと83日で新型コロナウイルスは終わります。

~感染で人気度がわかる?~

アキナは、日曜日の午前中、『サンデー・ジャポン』を見ながら考えていた。

ほぼ毎日のように、新型コロナウイルスに感染した芸能人が発表されていたが、

『かわいそう』
『すごく気をつけていただろうに、芸能活動するには限界があるのかな?』
『職業柄、うつるのは仕方ないよね』
『一緒に住んでいる家族は大丈夫かな?』
『年齢的に快復するかな?』

という同情される芸能人と、

『自業自得』
『ざまあみろ』
『どうせ遊んでいて、うつったんだろう』
『おまえが汚染源だ』

と非難される芸能人がいることが不思議だった。

「これって、その人のイメージだよな。」

アキナは、仕事がお休みの日は、いつも映画を観に行こうかどうか悩み、結局、いつも観に行くのをやめていた。映画館でクラスターが発生したことは日本国内では報告されていないのにもかかわらずなのにだ。

「もし、私がクリニック以外の場所で新型コロナウイルスにかかったら、クリニックの同僚は私を非難するだろうか、それとも、同情するだろうか。」

コロナ禍になる前、クリニック内では、アキナがライブによく行くことは有名であった。

それは、アキナの方から、ライブに行った感想をみんな話していたからである。

だが、新型コロナウイルスが日本でも流行りだすと、アキナはすぐにライブに行くのをやめた。

職業柄、新型コロナウイルスに感染してしまうと、職場や患者さんに多大な迷惑をかけてしまうためだった。

ところが、職場の同僚や事務長は、新型コロナウイルスの第一波がきているとき、アキナにしきりと、

「まさかまだライブになんて行ってないでしょうね?」

と聞いてきた。それが、一人や二人ではなかったのだ。しかも、みんなまとめて聞いてくるのではなく、一人一人アキナの前に現れては聞いてくるので、アキナは一人ずつ否定する必要があった。

「私って信頼されていない人間なんだな。みんなから医療人としての自覚がないと思われていることが、今回のコロナ禍ではっきりとわかった。」

アキナは悲しくなった。だから、自分が新型コロナウイルスにかかったら、何となく同情されずに、非難されるような気がしていた。

「⚫⚫クリニック内で、新型コロナウイルス感染第1号だけには絶対なりたくない。」

アキナは今日も映画館に行くのをあきらめた。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと83日。

これはフィクションです。

《募集中》

《作品集》あと100日で新型コロナウイルスは終わりますのマガジンに、昨夜、他の作家さんの作品が追加されました。トップページのマガジンをクリックしてご覧ください。

たくさんの記事の中からわたしの記事にご興味をもち、最後までお読みくださって、ありがとうございます。 いただいたサポートは、私が面白いと思ったことに使い、それを記事にしたいと思います。