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イタリアひとり旅② トランジットは、ドバイにて。

飛行機事故における生存率を私は知らない。

詳しい数字は知らないが、事故発生率が低い代わりに生存率も低いことはなんとなく認識している。
初めての長距離飛行で、そんな不安に押し潰されて出立前日は号泣した。
しかしそんなことで挫けている場合ではないのである。だから、手紙をしたためた。宛先は「帰国した私へ」。自分が不安に思ってることを全部並べて、帰って来た時に心配しすぎだったと笑って欲しいと締めくくった、未来の自分に託した手紙。
書き終えるとスッキリして、なんだか胸が軽くなったことは今でも鮮明に覚えている。

そして、いよいよ出発である。

旅行を決意した小説に登場する青いスーツケースと似た、スカイブルーのスーツケースを引っ張って、いよいよ旅が幕を開ける。

空港でチケットの受け取りやら、搭乗手続きやら、出国審査やら、やることは沢山あったが案外スムーズにできた。人間やればなんとかなるものである。
離陸時刻は24時前。夜中の空港はなんとなくがらんとしていて人がいるのに殺風景な不思議な空気だった。

初めての国際線。

チケットを見せて、アナウンスや案内に従って通路を進む。機体に入り、前の人に続いて機内の階段を登ろうとしたところで乗務員さんに笑いながら止められた。
何事かと焦ったが、2階はビジネス・ファーストクラスだったのだ。なるほど。たしかになんとなくキラキラしてる気がする。
謝りながらエコノミーの自分の座席を探した。隣は空席で、通路側だったので予想以上にゆっくり過ごすことができた。

夜を追いかけるように、飛行機は中継地であるドバイへと飛び立つのであった。

ちなみに機内ではほぼ寝ていたのでよく覚えていない。機内食は美味しかった。


ドバイ。
夜明け前のドバイは人が多く、しかし恐ろしく静かな空港だった。
国にはそれぞれ独特のにおいがあるらしいが、ドバイは香辛料のような香りがしたような記憶がある。

待ち時間が4時間あり、暇だったので適当に免税店を巡ったし、名産のデーツの試食もした。アラビア文字の書かれた水と、エジプトの壁画のようなマクドナルドの看板にはテンションが上がった。
あとはひたすらベンチに座ってAmazonプライムで保存しておいた『さらざんまい』を見た。
ちなみに、この後旅の道中、何度もこのアニメには助けられることになる。
挫けかける心に、真顔で踊るイケメン警官とカワウソイヤァ!の掛け声はなんだかとても染みたのだ。ありがとう、さらざんまい。

さらっと、乗り継ぎを済ませて。

そして私は、ドバイで登った朝日と共にイタリアはヴェネツィア、マルコポーロ空港に降り立つのであった。