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小説を書く。その5【BL小説】

 眩しい朝日が、神社の床下まで入り込んで来る。今日も一日が始まる。神社の人間達は早起きだから、そろそろ庭掃除に出てくるかもしれない。

 俺はリックのもふもふした腹の毛に包まれたまま、そっと片目を開けた。が、またすぐに閉じてしまう。

 起きたとしても、猫の身の上で特にやることもない。この神社は『地域猫の餌場』とやらで、決まった時間にご飯が出てくるので、狩りに行く必要もない。
 リックは「腕がなまる」とか言って、よく雀を追いかけたり、犬にケンカを仕掛けたりしてるけど。 

 俺がモゾモゾ動いたのでリックが「う〜ん」と大きく伸びをして、薄目を開いた。

「起こした? ごめん」
 慌てて謝ると、
「……もう少し寝てろよ」
 と、欠伸をした。

 リックはこの辺りのボスだ。
 流れ者の俺にも親切で、いろいろ世話を焼いてくれる。
 こうして寝床も貸してくれている。おかげで俺はすぐに馴染むことができた。

 いずれ……ちゃんと、恩返しができたらいいな……。
 まどろみの中、そんなことを思いながら、また夢の中へ。
 いつもありがとね、リック。
 口に出ていたかどうか、自分では分からない。
 でも、リックの
「俺は、お前がいてくれたらそれでいいんだよ……」
 とぼそりと呟く声を聞いたような気がした。

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