小説を書く。その73【BL小説】
たとえばさ。
今ここに彼が来て。
「昼飯、一緒に食わねえ?」
とかなんとか言ってきてさ。
屋上で二人並んで弁当広げて。
「玉子焼きいっこちょーだい」とかさ。
食べ終わったら二人で青空見上げてだらだらしゃべって。
そんなんだったら最高だよなあ。まああり得ないんだけど。グラスでも人気のある彼が、陰キャの俺なんか相手にするわけない。
ぱくりと唐揚げを口に入れてもぐもぐやってると、屋上の重たい鉄の扉がギギイと開いた。
よっ、と片手を上げて近づいてきたのは、なんとたった今都合よく妄想の餌食にしていた彼ご本人だった。
「えっ……な、なに」
「昼飯、一緒に食わねえ?」
……夢かな。夢かもしれないな。
たぶん、きっとそう。
でも、「なに呆けてんだよ」って軽く頰をつままれて、やっと現実味を帯びてくる。
「な……なんで?」
ああ馬鹿、そんなこと訊かなくていいのに。
「なんでって……一緒に食いたかったから?」
にっと片方だけ口元を上げる。その整った顔を見ていたら、なんだかどうでもよくなってしまった。
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