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「パブリック 図書館の奇跡」

話題の映画ですが、予想よりもさらによかったです。見終わって、パブリックっていいタイトルだなあと思いました。副題は、まあ置いといて。

舞台はオハイオ州シンシナティの公立図書館。中西部の厳しい冬、図書館の常連客であるホームレスたちはある晩、図書館に立てこもり、緊急シェルターとして図書館の解放を訴える。図書館員として働く真面目なスチュアートは戸惑いながらも立てこもりに巻き込まれる。平和的なデモのはずだったが、検察官やメディアの思惑で、スチュアートは精神を病んだ危険人物に仕立て上げられていく。そして、スチュアートとホームレスたちが取った行動とは…

図書館という静かな場所が舞台ですが、音楽はヒップホップ。深刻な問題を取り上げながらも、ちょこちょこ笑えるけれど、コメディすぎない映画。

主人公のスチュアートは、立てこもりのリーダーのようになってしまうのですが、決してヒーロー的に描かれないのがよかったです。愚直なスチュアートは、ホームレスに同情はしますが、デモを先導したり、ホームレスたちを引っ張っていく積極的な存在ではありません。画面の彼はずっと悩んでいます。どうすべきか、どういう態度を取るべきか。頼りなく見えるその戸惑いに、視聴者も共感して同じ視線で考えさせられます。

視聴率を稼ぐためにわざとセンセーショナルな報道をするメディアには終始イライラしました。まさに現実と同じ。でもレポーターの女性の最後の言葉にはちょっと救いがありました。

この映画、作り手が違えばもっと、勧善懲悪に気持ちよ~くラストを迎えることもできたと思うんです。イヤなヤツが思いっきり痛めつけられるような。でも、あくまでも現実的なレベルのハッピーエンドに留めたところがまた、この映画の良さだなと思いました。脚本・監督・主演を務めたエミリオ・エステベス(元アイドル俳優!めっちゃいいおじさんになってる)の思い入れが伝わる作品でした。

図書館で働く人には憧れがありますが、改めて、公共性のある場所で働く人に求められる責任の大きさに気付かされました。本が好きだけでは絶対にできない仕事です。

東京で働いていたころ、会社帰りにときどき寄る大きな図書館に、いつもいるホームレスのおじさんがいました。おじさんはソファ席で新聞を読んでいる時もあれば、ただ座っている時もあった。あの人はまだ閉館ぎりぎりまであの図書館にいるんだろうか。

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