妊娠日記〜番外編〜入院生活
2021年10月
生後1日
初めての母子同室の夜。うちの赤ちゃん、どうやら声が大きいようである...。
授乳により、乳首がすでに痛い。分娩台で初めての授乳をした時は、なーんや、全然痛くないやん、かわいいだけやん、と思っていたけど、小さな体からは信じられないほどの力で一生懸命おっぱいを吸うので、一夜にして乳首はやられた。
お股の傷口が痛くて、立ち上がったり、座ったりするのに、ものすごく時間がかかる。ベッドから起き上がり、赤ちゃんを抱き上げ、再びベッドに座って授乳。赤ちゃんをコットに戻して、ミルクを作って、また抱き上げて、ベッドに座ってミルクをあげる。この動きの連続なんだけど、いちいち痛いし、時間がかかるし、ずっと「あいだだだだだ…」とつぶやいている。円座クッションをお尻につけておきたいぐらいだ。この痛みさえなければわりと元気なのに。
生後2日
あまりにも痛いので気になっていた会陰の傷は、4段階中2のレベルだったそうで、そこまでひどくなかったと分かって安心した。確かに、痛みは昨日よりもマシになっていて、ゆっくりだけど歩けるようになっている。そりゃ、こんな頭が出てきたんだもんな。助産師さんたちに「え~
~頭おっき~い」と笑われていた赤ちゃんの頭をなでる。
分娩に立ち会ってくれた助産師さんが部屋に来て、お産の振り返りをしてくれた。助産師さんは、最後まで諦めずに偉かった、と褒めてくれた。諦めるなんて選択肢なかったんですけど…。自分はすごいことをした、本当に頑張ったと、自分で自分を褒めてあげてほしいと言ってくれた。自分の健康と、自分に健康をくれた両親へ感謝して、これからも自信を持って育児をしてほしいと。思いがけずそんな話をされて泣きそうになった。全ての人間がこうやって母親のおなかから生まれてきたんだと思うと不思議。
後悔としては、前駆陣痛の最中、編み物なんかせずに横になって体力を温存しておくべきだったということと、陣痛が10分間隔になったタイミングで何か固形物を食べておけばよかったということ。
夜、夫とビデオ通話。夫が神社からもらってきた名前の候補について話し合う。途中から、赤ちゃんが泣き始めたので、そこで通話終了。赤ちゃんのあまりの泣き声の大きさに私の精神状態を心配する夫。
キャー!キャー!と悲鳴のような高い声で泣く赤ちゃん。まっっったく泣き止まない。途方に暮れて、助産師さんを呼ぶ。私もちょっと泣く。
助産師さんが部屋に入り、赤ちゃんを縦に丸く抱いた瞬間、赤ちゃんが泣き止んだ。助産師さんが神に見える。縦に抱いて胸に密着させ、心拍を聞かせるといい、と言われる。おなかの中にいたときと同じ体勢にすると落ち着くらしい。そうか、まだ外の世界に出てきて2日だもんな。頑張れ、赤ちゃん。ミルクをガッツリ追加してあげたら、その後まったく起きなくて心配になった。新生児の洗礼を受けた夜だった。
生後3日
母乳が出るようになってきた。人間の体、すごいな…。相変わらず、乳首は痛いけど。妊婦友達が、お菓子と乳頭ケアセットを差し入れしてくれた。うれしくて、またちょっと泣いた。
赤ちゃんは深夜2時半ぐらいにやっと寝てくれた。早食いの大食いって感じで、ミルクはゴキュゴキュと一気飲みして、吐きまくる。くしゃみが出そうで出なかったときの様子がかわいい。
赤ちゃんも寝たし、さあ寝ようと思うと、急にネガティブな思考が止まらなくて寝られなくなった。これまであった悲しいこと、これから起こるかもしれない悲しいことを想像して、つらくなった。産後の夜中のメンタル、危険! バカバカしい深夜ラジオを聴いて寝る。
生後4日目
退院する日。
産後の入院って、もっとチヤホヤされて幸せいっぱいのご褒美期間かと思ってたけど、面会もないせいか、短期育児合宿って感じで精神的にも体力的にもなかなかハードだった。でも、この数日のおかげで、これからの1か月、新生児との生活を頑張る自信がついた。それにしても助産師さんたち、みんなすごい。すごすぎる。大変な仕事だ。
退院前の診察で「これからが本番ですからねー!」と言って送り出された。そうだ、そうだ、ここからがスタート。
夫は病院にお迎えに来れず、母が来てくれた。赤ちゃんの顔を見るより先に私の体調を気遣う母に、これが母親ってことか、と思った。夫は来れなかったけど、顔を見たら泣いちゃいそうだったからよかったかも。
夜遅く、夫が実家へやって来た。赤ちゃんと会うのは生まれたときぶり。赤ちゃんを抱っこすると、父の仏壇の前で小さな手を合わさせていた。