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看板屋 #1 BARBER SHOPセイボー

宮崎県都城市にある「バーバーショップ セイボー」様からのご依頼で製作した看板の製作風景です。実際に行った作業の順を追って紹介していきます。

1.ヒアリング

お店は新規で開業されるとのことで製作当時は改装中だった店舗へ訪問しました。

残念ながら、現地の建物全体の写真はないのですが、市の公設市場の一角に入る店舗でした。大きな倉庫の様な建物の中に縦横の通路が通され、食堂、八百屋さん、包装資材を扱う店舗、喫茶店などが軒を連ねている場所でした。
ちなみに、私の住むエリアからは車で2時間弱ほどの場所でしたので、その市場へは初めて訪れました。昭和を思わせるレトロなお店が沢山あり、更にそれが一つの建物の中ともあって何だかタイムスリップした様な気分になりました。

そして、店主にお店のコンセプトやお客様層などのお話を伺いました。
まず、店主は30代の女性で、とても明るく親しみやすい方でしたので、男女、子供から年配の方まで、幅広いお客様が利用されるとのことでした。
「セイボー」という名前は、亡くなられたお父様の子供の頃からのあだ名であったこと、店内で使用する椅子は、引退した理容師の方から縁があって譲り受けたものであることなどなど、心温まるストーリーで溢れていました。

2.デザイン

ヒアリングしたお話をもとにイメージ、デザインをしていきます。

「理容室」という業種に関しては勿論、それ以外に今回、私が感じとったポイントと配慮した点をまとめると…

① 店舗の環境、立地(市場の中、他の店舗と並んだ時のイメージ)
② お客様の希望(お洒落なイメージ)
③ ストーリー(温かい、懐かしい)

看板に問わず、デザインの初期作業として私がよく活用する方法は、上記にある様に「ワード」を無数に挙げていくことです。

(例)  市場  お洒落  温かい  懐かしい

3.製作

材料について

[2.デザイン]でお話しましたが、温かい・懐かしいを配慮し、材料には木材を使用しました。木材はアクリル板などの素材と違い、吸水性があります。
同じ塗料を使用しても、アクリルと木材とでは仕上がりが変わってきます。
また、単純に木を使うことで親しみやすさやレトロ感が増します。

塗料は、さらに落ち着きや雰囲気へ馴染ませるために艶消しの物を使いました。
( 店舗に掛けた後はライトアップしたいとのご希望も踏まえ、艶消し塗料が反射防止にもなります。)


加工について

塗料は主張しすぎない艶消しを使うことで落ち着き感は出ましたが、看板としては表情が欲しいところです。普段、私は木版画も製作しますので、木彫を施します。
「 布袋彫り(かまぼこ彫り)」という彫りで文字・装飾を彫りました。
時代劇によく出てくる看板みたいな加工です。越後屋とか…
そして、お気づきの方もおられるかもしれませんが、そうです、ライトアップです。光が当たった時に影もできますね。

ちなみに、日本語の文字だけでこの木彫を施すと和風に近くなると思いますが、店主の希望は「お洒落」でしたので「BARBER SHOP」を入れることで和洋折衷バランスが取れたと思います。

ここまでは、外周のアウトラインの加工以外は全て手作業です。

4.完成(取付)

壁面、看板裏面に取付金具を付け、設置。
基本的には、訪問できるエリアに限ってではありますが取付作業まで行います。

夜の明かりでも少し色の見え方が変化しますね。
今回、建物内の店舗で風雨に晒される心配がありませんので文字色、装飾にアイボリーを使用しました。

完成時、店主の方にも喜んで頂けたことや、心温まるストーリーと時間を共有させてもらえたこと、ありがたやありがたや。

この看板の製作は2015年でしたが、その後、公設市場の老朽化に伴う施設建て替えの為、休業されるとのことでした。
タイムスリップした時間が益々貴重なものであったことに気づかされ、切ない気持ちになりました。しかし、私の記憶の中にはしっかりと残っています。



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