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「適切な問い」こそが示唆を主体的に得る過程を創り出す - 対話型ファシリテーション

チームに共有する機会があったため簡易的なメモとして残しておきます。

サマリー

対話型ファシリテーションとは何か

  • 事実のみを質問していくことによって、当事者が思い込みに囚われることなく自分の状態を正確に捉え、そのことによって自分の経験知から課題の解決につながる示唆を主体的に得る過程を創り出す手法

なぜ重要か

  • 自分の経験から問題の解決策を発見するためには、他人から適切な問いを投げかけてもらうことで事実を正確に思い出すことが必要であるため

どのように実践するか

  • 事実質問をする

    1. 簡単な事実質問を繰り返すことで相手の現実を浮かび上がらせることが重要である

      1. なぜ・どうを徹底的に避け、「いつ」を使う

        1. ※いくつ?いくら?も使える

      2. yes/noで簡単に答えられる質問をし、事実質問を継続する

        1. yes → 事実質問を継続

        2. no → 事実質問で経緯を明らかにする

      3. 事実のほんどは過去の出来事である

        1. 「どうしますか?」という現在形の質問を使わず、「どう対処しましたか?」という過去形の質問にする

  • 信じて待つ

    • 経験の基礎原理から、人間は自ら発見した際に行動変容が促される

      • 発見への刺激は外部から与えられるが、変化は常に内側から起こる

    • 最後の一言(気づき)を相手が発するまで待つことが大切である

1. What: 対話型ファシリテーションとは何か

1-1. 対話型ファシリテーションとは

ファシリテートする側が当事者に対して事実のみを質問していくことによって、当事者が思い込みに囚われることなく自分の状態を正確に捉え、そのことによって自分の経験知から課題の解決につながる示唆を主体的に得る過程を創り出す手法である。
また、この手法はファシリテートする側が事実のみを訊くことによって自分が現在何を訊いているのか正確に認知すること、すなわちファシリテートする側のメタ認知(meta cognition)を促し、ファシリテーションの過程そのものの客観性とファシリテートする側と当事者とのコミュニケーションの効果を最大限に担保する。

1-2. 問題とは何か

問題とはToBeとAsIsのギャップである。
問題解決の方法は以下の2通りであり、前者が優先されるべきである。

  1. AsIsをToBeに近づける = 創造的緊張

  2. ToBeをAsIsに近づける = 感情的緊張

参照: 学習する組織

どちらにせよToBeとAsIsのギャップ(問題)を明確にすることで何ができるのかを明らかにする必要がある。
ToBeとAsIsのギャップ(問題)を事実質問で明らかにする。

2. Why: なぜ対話型のファシリテーションが重要か

自分の経験から問題の解決策を発見するためには、他人から適切な問いを投げかけてもらうことで事実を正確に思い出すことが必要である。
なぜなら私たち人間には以下のような癖が存在するからである。

  • 何かが起こるとすぐに原因を探す

    • しかし、物事の因果関係は複雑であり、単独の原因に帰せられることは少ない

  • 自分の都合の良いように解釈する

    • できないことの言い訳は探すが、本当の解決策を学ぼうとしない

    • まずは自分自身の経験の中に問題の解決策を探すのが効果的である

  • 自分の都合の良いように記憶をつくりかえる

3. How: どのように実践するか

3-1. 事実質問をする

私たち人間は、「なぜ」「どうして」と聞かれると言い訳を答えるようにできている
事実を聞くつもりで相手の意見や考えを聞く質問をしてしまい、結果として相手の思い込みや思惑を引き出してしまうことで、物事をよりわかりにくくしている

  • 解釈ではなく、事実を質問する

    • どうでした?という質問は解釈を聞く質問であり悪手である

      • 聞く方は容易に聞ける

      • 答える方はどうにでも答えられるだけに相手を戸惑わせたり確信のない答えを強要したりする可能性が高い

    • 「誰が」「いつ」「何を」「どうした」を聞くべきである

  • 一般質問ではなく事実質問を用いる

    • 一般質問への回答は解釈から構成される

      • 一般質問とは「いつも」「最近」「皆さんは」から成る質問である

      • この一般化された質問には「思いますか?」が省略されている

      • これらの質問に対して、回答者は思い込みや希望を交えて回答する

3-2. 時系列で質問していく

  • 相手に正確に事実を思い出してもらう必要がある

    • そのために

      • 直近の事実から問う

      • 最初の顕在化の際のこと問う

3-3. 信じて待つ

  • 前提

    • 経験の基礎原理が存在する

      • 聞いたことは忘れる

      • 見たことは覚えている

      • やったことは身に付く

      • 発見したことは使う

        • 忘れない、気づきの喜び → 行動変容につながる

  • どうするか

    • 信じて待つ

      • 刺激は外部から与えられるが、変化は常に内側から起こる

      • そのため、最後の一言(気づきの言葉)を相手が発するまで待つ

      • しかし、待つことほど積極的で困難な行為はない

        • 「信頼」 + 「適切なタイミング刺激を与えることのできる自信」がないとつい刺激を与え過ぎてしまう(相手が気づく前に提案してしまう)

    • どのように待つか

      • 提案したいと思ったら1分待つ(待つ訓練をする)

      • 事実質問で刺激を与え、あとは信じて待つ

3-4. 本当に解決すべき課題か見極める

問題か願望かの見極めを行うことが必要である
そのため

  1. 事実質問を行う

    1. 一番最近、誰がどのように困りましたか?

    2. それを解決するためにどんな対処をこれまでしてきましたか?

  2. 問題そのもの(への解釈)は聞かない

    • オープンダイアログで代替する

      • それはなんですか?

      • 何でできていますか?

      • いつ手に入れましたか?

前提として理解すべきこととして、

  • 自分の問題を分析する場合、人間は自分の都合の良いように解釈してしまう

    • 良い結果は自分のおかげ、悪い結果は外部他者のせい

    • 記憶そのものが歪み、つくりかえられる

終わりに

プロダクト開発における、ユーザーインタビューについて学んだ際に得た知見が見事に言語化・体系化されていました。

このエントリーでは対話型ファシリテーションについてを無機質に記載していますが、最後に私自身に言い聞かせたいことは以下だと感じています。

  • 日常の幸福感・充実感は身近な人とのコミュニケーションのあり方に大きく左右されるためコミュニケーションは重要である

  • 対話型ファシリテーションとは第三者のためのコミュニケーションツールであり訓練によって鍛えることができる

  • 事実と解釈を区別することに意識的になることが大切である

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