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まもなく祖母100周年!

あと数年で100歳を迎える祖母がいる。この前会ったときは全身がぶくぶくと膨れ上がり、蓄えられた知識と経験が形を持っているようだった。

祖母は岡山で生まれ、高校卒業までをその地で過ごした。卒業後は父親の転勤により岡山から福島へ、福島から埼玉へと住まいを移していったそうだ。

そんな祖母は文学が好きだった。今はNetflixなどのサブスクがあるが昔は本しか娯楽がなく文学全集を読んで日々の退屈をしのいでいたそうだ。

30代の頃、祖母は新聞記者と結婚した。しかしその16年後、夫であるその記者に全財産を持ち逃げされ、群馬の実家に帰ることを余儀なくされた。

それでも祖母は落ち込むことはなかった。とてもエネルギッシュな人間だったのだ。ボランティアや政治活動に積極的に参加し、趣味の絵描きで数々の賞を受賞した。海外から表彰されることも多く祖母の家を訪ねると記念品の高そうなワインが年季の入った木製の食器棚によく飾られていたのを覚えている。

ある時、祖母はボランティア仲間に誘われ八ヶ岳(山梨と長野両県にまたがる山々の総称)へ行った。そこで祖母は白い木を見て驚く。

「これはなんですか?」

「白樺(しらかば)の木ですよ」

当時、西の方には白樺の木は生えていなかったらしい。岡山で生まれ育った祖母は白樺を見るのが初めてだったのだ。

続けて祖母はボランティア仲間に周囲に生えている木々の名前を尋ねた。その中には落葉松(からまつ)も含まれており、その名前を聴いた祖母は深い感銘を受けた。いつか読んだ島崎藤村の詩集にある『落葉松の樹』という詩を思いだしたのだ。そして思わず藤村の詩を口に出して詠んだのだと言う。


 
祖母が白樺の白さを知り、詩の中に書かれていた落葉松に出会えたのは、53歳のときだった。半世紀も生きてやっと知ることがある。その事実は僕をとても驚かせた。


 
 
この話にこそ祖母の長生きの秘訣が隠されている気がする。おそらく祖母はずっと生きることを楽しんでいたのだと思う。日々の中に発見を見出だし飽きることなく人生を歩んできたのだ。結局、生きるのがうまい人は長生きするという簡単な話に落ち着く。

僕も長生きするために何事にも興味を持つ好奇心と視点を変えて世の中を見る洞察力、そして自分の心を自分で守るセルフケア力、この3つを身に付けて楽しく過ごしていきたいと思う。

好奇心と洞察力とセルフケア力と

まるで篠原涼子みたいだ。彼女は「愛しさと切なさと心強さと」という曲を歌っている。

それとタイトルで「まもなく100周年!」と言ってるので読者の皆さんはあと2~4年くらいで100歳になると思ったでしょうけれど祖母の年齢は予想外に若く91歳です。100歳になるまで9年というまあまあ長めの期間が残ってます。

 
生きろグランマ!


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