授業終わりの俺は誰とも喋らずに帰るぜマジで
誰とも喋らずに帰ってしまうぜ。
クソッ。
喋りかけたいやつの隣にもう1人喋りかけたいやつがいてどちらに話しかければいいかわからねえんだよ。
クソッ。
あと、喋りかけたいやつの横を石焼き芋のトラックがゆっくり通り過ぎようとしていて、喋りかけたいやつに近づいているはずなのにいつの間にか石焼き芋を買ってしまって、それを食べ終わる頃には、喋りたかったやつが帰ってしまってんだよ。
クソが。
こんな時もあったぞ。
授業前に俺が大事にしていたアリが踏み潰されてしまって、あの授業は俺のなかでずっとアリの葬式だったって時もな。
クソッたれだっぜ、畜生。
帰った理由、他にもあるぜ。
外に出た時、影が既にクラウチングスタートのポーズになってたんだよ。そんなに早く帰りたかったかって俺びくついちまったよ。へっへっ。
…俺はあの街にある「家」と呼ばれている「そこ」に帰らなくちゃ行けねえんだ。
そういえば最近、自分の影と二人きりになれてなかったな。なんか影には申し訳ねえや。
個人の理由だけじゃねぇぜ。ダチがよ、一緒に飯食おうぜって、早い時間に予約しちまってたんだよな、未だに電卓使ってる居酒屋をよ。
ったくしょうがねぇよなあんにゃろー。
あとよ、早く帰ったら新聞配達の女の子と家の前で出くわすことがよくあんだよ。だからそん時は直に新聞を受け取るんだけどよ、目の前でビリビリに破いて、その瞬間、あの子の顔をパシャリ撮って「驚いた女の子bot」にDMで送んだよ。俺、悪ぃだろ。悪(ワル)ってかっけーからよ。へっ。へーっ。
でもよ、こんなオイラにも情緒っーか、趣?みてぇなのもあんだぜ。誰とも喋らずに帰る理由ってのは時に人を詩人にさせんだ。誰だって誰かの詩人であるんだぜ。
夕方、オレンジ色の時の話よ。
帰る方向にあるよ、渡るべき信号が青だったから、今走ればもっと近くで青が見れると思ったんだよ。そして俺は近づいてこう言ったんだ。
「青がきれいですね」
そんだらよ、ずっと向こうにあるもう1つの渡るべき信号も青だったんだよ。今走ればもっと近くで青が見える。だから俺は走り出したんだ。俺は信号の青の光を浴びてよ、黒と青が入り交じって淡い藍色になった俺の影だ。そして一言。
「藍色か…今夜は赤飯だな」
どうでぇ、これが俺の、誰とも喋らずに帰る理由の全てだよ。悪くてダサくてかっけーだろ?
っへぇーっだ。
小さい頃からお金をもらうことが好きでした