団体立ち上げのきっかけは「プレ・シングルマザー期」にあり【急】
離婚前後の大変さを世の中に訴えるべく応募したビジネスプランコンテストで特別な賞を受賞した私は、様々なご縁から、週末にソーシャルビジネススクールに通う生活を始めました。(ここまでの経緯は「序」「破」でどうぞ!)。
初めて会った50人の中からメンバーを選び、調査手法を実践で学ぶ!
ソーシャルビジネススクールの初日は、初めて出会った見知らぬ参加者約50人の中から「社会課題調査に一緒に取り組むメンバーを30分で選ぶ」ことからスタートしました。
自分のやりたいことをA4用紙に書き、それをみんなに見せるように両手で紙を持ち、チームメンバーを探していきます。私は「離婚前後のシングルマザーの実態調査をしたい!」と書き、気になった人に「私とチームを作りませんか?」と声をかけ、「いや、ちょっと違うと思う」とフラれたりもしました。この時の私は離婚成立から1年も経っていなくて、人間不信気味のところもあり、なかなかの苦行でした。
そんな中で私は2人の男性に白羽の矢を立てました。
「高齢者施設の減災に取り組みたい!」ケアマネのTちゃんと「中学生のいじめ問題調査をしたい!」大学生のKくんです。
なぜこの2人にしたのかというと「人を安心させる何か」を持っていたのです。そして、自慢の高性能モラハラセンサーが全く反応しませんでした笑。
(性別関係なく、これ大事!)
この2つが決め手となり、「私とチームを組んでください!」とお願いしたところ、快諾してくれ、私たちは無事チームを結成しました。8番目に立ち上がったので便宜上「Hチーム」と呼ばれました。
その後「3人が感じている課題のどれを調査するか」を話し合い、Tちゃんと私は「調査手法さえわかれば、自分で取り組みたい課題は自分で挑む」という強い気持ちを持っていたので、Kくんの「いじめ問題調査」に決めました。そして「いじめ問題は多くの人に見守ってもらうことで減るのではないか?」という仮説を立てたことに端を発し、「Hチーム」を「ヘリコプタープロジェクト」に改称しました。さぁ、準備は万端です!
そこから6か月間、私たち3人はチームで調査をしました。週末は机上で学びつつ、平日は有給をとって中学校に行って生徒向けアンケートを依頼したり、いじめ問題の解消に取り組むNPOにヒアリング調査に行く日々。家に帰れば幼児の子どもたちにご飯を食べさせ、お風呂に入れ、寝かしつけて、私も知らないうちに一緒に寝てしまう…(あるある!)
そして夜中の2時くらいに起きて、調査結果をまとめるという生活を繰り返しました。調査手法を学ぶ中でチームで動く楽しさや大変さを知る私たち。時間がないなら作るしかないこと、人の知恵やモノ、場所を借りること、先行事例に学ぶこと等を学びながら、なんとか調査をやり終え、1年後にプロジェクトは解散しました。
おぼろげながらも調査手法がわかった私はいよいよ、自分の取り組みたかった「離婚前後のシングルマザーの実態調査」に乗り出します。調停や就活でシングルマザー特有の課題を見つけてしまった私。このまま見過ごしたら誰も扱わないかもしれない。誰にも頼まれていない。でも私は悔しい思いをした自分を救うために、今後私と同じような思いをする人が出ないように実態や課題を明らかにしたい。それだけでした。
友人、知人を頼りに口コミだけで「離婚シングルマザー」探し
私の取り組む調査は、私の住む静岡市を含む静岡県中部地区のシングルマザーの聞き取り調査がメインで調査対象者数の目標を100名と掲げました。
聞き取り調査内容は全部で60問。「離婚のきっかけ」「離婚を決意したのはどんな時?」「その時のまわりの反応は?」「どんな形で離婚成立したか?」「離婚成立まで何年かかったか?」「今の仕事はいつから?」「離婚後に元夫とのトラブルはあったか?」「面会交流はしている?」「養育費はもらっている?」「今の月収は?」など、とてもセンシティブなものばかり。それゆえ、調査対象者は私の友人または知人に直接紹介してもらう形で、口コミだけで対象者を探しました。
有給やお昼休憩を使っての「聞き取り調査」、終了後に感謝の声が続出
この調査は聞き取る私もシングルマザー、答えてくれる人もシングルマザーということで、お互いに時間がありません(泣)
ワンオペで家事育児仕事をこなすシングルマザーは時間も貧困なのです…
時間を捻出するために、私は有給やお昼休憩を使って、相手の職場近くのカフェまで出向いて聞き取り調査を行いました。プライベートな質問を1対1で聞き取っていきます。時間は短い方で40分、長い方で2時間かかりました。
そんな中、調査後に私が相手からしょっちゅう言われたのが感謝の言葉でした。「誰にも話さなかったことを話せて良かった。自分の離婚を振り返ることができたし、離婚して良かったと改めて思えた。ありがとう!」というのです。大変喜んでいる様子で、泣いて喜んでくれる方もいました。
相手の負担かもしれないと思っていたこの調査が喜ばれた。
この事実は私をほっとさせました。
その後しばらく経ってから、「ナラティブ・アプローチ」(相談相手を支援する際に、相手の語る「物語(narrative)」を通して解決法を見出していくアプローチ方法)というものを知りました。私がやっていたのはそれに近いものだったのかな?どなたかわかる方教えてください!
閑話休題。
調査開始から1年、離婚シングルマザー26人分の聞き取り調査結果がたまりました。同時並行で「元家庭裁判所の女性調停委員座談会」「離婚を経験した子どもの座談会」「面会交流がいやでたまらない母親座談会」も行い、私の知りたかった調査を全て実施し、様々な実態と課題がわかりました。拙いながらも自分なりに分析してわかったことは、「シングルマザーの生きづらさは個人の問題ではなく社会の問題」ということです。社会の責任が個人の責任にすり替えられて、「個人が努力しないのが悪い」と落とし込むような社会になっているということでした。
調査結果を白書として出版
聞き取り調査対象者目標を100名と掲げましたが、そこまでには時間が随分とかかりそうです。ソーシャルビジネススクールの先生や先輩方のアドバイスもあり、まず第一弾として白書を自費出版することにしました。
その名も『私たちの選択と決断 : 離婚、子どもと漕ぎ出す新たな未来 : プレシングルマザーヒントBOOK : 離婚前後の実態調査 静岡中部地区データ』です。ところで国会図書館って本当にすごいですね。こんな小さなものまで収蔵しているとは!ここで働く友人が「うちにもあったよ!」と教えてくれました笑
そして出版にあたり、団体を立ち上げます。
この白書が「離婚の入り口に立った人の役に立つものでありたい」という願いを込めて「ひとり親」の英語表現である「シングルペアレント」と「入門編」を表す「101(ワンオーワン)」をくっつけて「シングルペアレント101(ワンオーワン)」という団体名を付けました。(いちまるいち、じゃないです笑)
白書はラクスルで初版500部を用意し、1冊500円で販売しました。
当事者が作ったこの手の白書はあまりないようで、地元の新聞にも取り上げてもらい、たくさんの方に手に購入していただきました。
完全に手売りです!
初版を売り切り、追加で200部作りました。これもほとんどが売れ、手元にはいま数冊しかありません。一番多くご購入下さったのは私をこの道にいざなってくださった元女性会館の館長Mさんで、たくさんの方に広めてくださいました。NPO界の私の母です。本当に感謝しかありません。
そしてこの白書の経験から『プレ・シングルマザー手帖』も生まれました。
ちなみにこの後も「面いや母座談会(長いから省略!)」調査を定点観測として続けていて昨年発行した『プレ・シングルマザー手帖』にも「面いや母座談会」続編を掲載しています。なので、この白書と『プレ・シングルマザー手帖』を読むと「面いや母たち」を取り巻く状況が変わっていて、とても興味深いです。またそのうち座談会を実施しようと思っています。
発足10年に寄せて
私が団体を立ち上げた経緯を3回にわたり、長々と書き連ねました。
ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます!
振り返ると、一人で始めた活動が今では心強い仲間がたくさんいて、いつも仲間が私を助けてくれます。ヘリコプタープロジェクトで同じチームだったTちゃんは「災害直後から福祉サービスが利用でき安心して生活できる地域を創る為に福祉事業所の災害対策のワンストップサービスを提供する」会社を立ち上げ、バリバリ仕事をしています。
去年Tちゃんの会社の10周年記念パーティがあったのですが、うちの団体の寄付集めを会場でしてくれました。本当にいい仲間です。
そして、今年12月にはうちの団体の発足10周年を迎えます。来月からは「不登校児を抱えるひとり親家庭の実態調査」に取り組むことになり、図らずも原点に戻ってきた気がします。私はやっぱり調査が好きなのです。ありたい未来に近づけるために、現実と理想の差を少しでも埋めるための実態把握をしたいのです。そしてひとり親でも安心できる社会に変えていきたい。
最近は調査票のたたきの準備やワンストップ相談会の準備、共同親権が危険な運用にならないようなソーシャルアクションの準備をそれぞれのステークホルダーと進めています。大勢の仲間とコツコツと社会を変えていく日々を過ごしています!
今後も折を見て、noteを書いていこうと思います。
どうぞ引き続き応援よろしくお願いいたします。
ひとり親家庭を取り巻く社会課題について「当事者として」また「支援者として」全方位的にお伝えしていきます!是非ともサポートをお願いします!