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「まなぶちから」を考える

私は幼少期の生活の中で、自分で考え、学んでいくことができる基礎、学びの原点のようなものが育まれているかどうかが、その後の人生に大きく関わるのではないかと考えています。

そんな学びの原点を、こども達が楽しみながら育むにはどうしたらよいかと考えて試作したカードについて、今回はお話したいと思います。


■カード開発のコンセプト

私は「まなび」とはある対象を認識して、認識した事柄を考え、その結果を具体化することで、概念を自分の中に蓄えていくことだと思います。

簡単にいうと、そのステップは

①とらえる
②かんがえる
③あらわす

の3つで、これを繰り返すことで知識や知恵、創造のタネを蓄えていくことができるんだと考えています。基本的に生活の中のどんな場合もこの3つの工程を経て、学んでいるんじゃないかと思います。いわゆるインプットとアウトプットを繰り返すってことと同じなんじゃないかと。。。

こういったステップにおいて必要な能力を育みたいというのが、今回紹介するカードのコンセプトになります。

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■まなびのサイクル

たとえば、まなびの3ステップを普段の会話を例に説明すると以下のようになります。

①とらえる・・・相手の発した言葉から、その意味がわかる

②かんがえる・・・相手の発した言葉の意味から、相手の考えを理解できる

③あらわす・・・相手の考えを理解したうえで、自分の意思を表現できる

この手順がちゃんと踏めれば、会話は円滑に進みます。

会話を繰り返すほど、相手の発した言葉の意味を文脈からより適切に捉えられるように、またその意味から相手の考えをより推し量ることができるようになり、そのうえで自分の考えをより適切な言葉にすることができるようになっていきます。

私たちは何気ない会話を繰り返すなかでも学んでいるんだなぁと感じます。

それぞれのステップはその次のステップに影響するので、サイクルが好循環に入っていれば、会話のスキルはどんどん上達し、上達するほど楽しく、おもしろくなっていくでしょう。

逆に1ステップでもうまくいかなければ、会話がつながらなかったり、会話が億劫になっていってしまいます。

ここでは会話を例に説明しましたが、これは何かを「まなぶ」ときにすべてに共通することだと思います。

「まなぶちから」はうまくサイクルを回せればどんどんは上達し、逆にうまくまわせなければ、現状維持ではなく、どんどん退化していくんじゃないか、ということです。


勉強でいうなら、うまくサイクルを回せれば、うまく学べ、楽しくなるので勉強するのが好きになって、さらに勉強がしたくなる一方、うまく回せなければ、うまく学べないことで、成功体験が得られずに勉強に苦手意識をもってしまい、さらに勉強するのが苦手になっていくようなイメージです。

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■サイクルを好循環させるには?

私はこの「まなびのサイクル」をどうにかうまく循環させたいなぁと考えました。

考える中で、それぞれのステップは相互に関係し、影響を与えるので、各ステップをうまくこなせる能力を磨くことが必要なんじゃないかという結論に至りました。

そこで、まなびの各ステップに関連する能力を考えてみました!

①とらえるには ⇒ くらべる、かんじる

ものごとを正確にとらえるためには、目の前のものごとを対比、類比(くらべる)などし、それらの違いを把握する必要があります。

違いが分かるからこそ、りんご は りんご、みかん は みかん などのように、それぞれを別のものとして認識できます。

また単なる見たままの特徴だけでなく、そこから得られる情報はさまざまです。人と話しているときに相手の表情を見て、その感情をどう想像する(かんじる)かでその認識は変わってきます。

言葉の意味と表情との間に違和感があれば、言葉の意味のまま鵜呑みにすることは正確にとらえているとは言えません。どれだけ相手の気持ちを感じとれるかが重要になってきます。

②かんがえるには ⇒ ならべる、まとめる、ながめる

ものごとを論理的にかんがえる方法としてはAだったらB、BだったらCなど因果の関係を順序立ててかんがえる方法(ならべる)、いわゆる演繹法と、

「手に持ったりんごは手を離せばいつも下に落ちる」という経験から「地球上には重力がある」という法則性が見つかったように、事実を整理することでかんがえる方法(まとめる)、いわゆる帰納法があります。

考えることとは結局、ルールや法則から物事の行く先を推測することかなと思います。

また、特に自分の状況を客観的に引いて見る(ながめる)ことが、物事を理解するうえで重要なんじゃないかと思います。

自分が何をわかっていて、何をわかっていないかがわかっていれば、対処のしようがあり、自分はなぜそう考えるのか?と自分に問いかけることができれば、自分の論理の確認ができるからです。

③あらわすには ⇒ うみだす、つたえる

自分の中でかんがえたものを外の世界に表現する、つまり一旦アウトプットすることは自分のとらえたこと、かんがえたことを客観的に確認することにつながります。

そのためには、自分の考えを文章にしたり、言葉にしたり、目に見える形、耳で聞こえる形など再び認識できる形で具現化する(うみだす)ことが重要です。

また、どのように自分の考えを表現するか、相手につたわりやすいように工夫する(つたえる)かで周りの人と協力することができるかどうかが変わってきます。自分一人だけでは大きなことはできません。

■これらの能力を伸ばすためのものをつくりたい

こんなふうに「とらえる、かんがえる、あらわす」の各ステップにおいて必要な能力要素があるんじゃないかと思います。

これらの能力要素は繰り返し使うことで強化され、その結果、まなびのサイクルの各ステップの能力が上達していくんだと思っています。

そして各ステップの能力が上達すれば、まなびのサイクルをうまく回すことができるようになるのではないかと考えました。

ではどうやったら、これらの能力を伸ばすことができるでしょうか?

身も蓋もないですが、私はやっぱり練習あるのみでないかと思うんです。

ただ、「練習」とか「訓練」というと何だか重たい。本来、まなびとは楽しむものだと思っていて、まなびといわなくても何かに取り組むときは楽しんでいる状況が理想だと思います。「とらえる、かんがえる、あらわす」という各ステップを遊びの中で繰り返して、関連する能力要素を刺激しながら強化できないかなぁと考えました。

そんな想いから生まれたのが「Cyclearn」です。

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何事も楽しくないと、うまくいきません。まなびの好循環サイクルを何度も繰り返して、「まなぶちから」が育まれるようにするには、やはりそれ自体を遊びに組み込むことが一番だと考えました。

開発したカード「Cyclearn 」は動物達の写ったカードを使った遊びの中で「まなび」のステップで必要な能力を自然とトレーニングできるように考えて設計しています。

こども達と「Cyclearn 」を使って遊ぶことで、彼らが将来どんな道を歩んでいこうとも、生きていく上で大切な「まなぶちから」の種が芽吹くことを願って作りました。

これからの時代AI(人工知能)が普及していきます。もう機械は人間の目を上回る認識力を手に入れており、人間の代わりができる領域が出てきています。

ですが、AIはあくまで人が学ばせてあげなければいけません。自分を客観的に見たり、学んだことを他に応用することもできません。

人との大きな違いのひとつは自ら学べるかどうかであり、「まなぶちから」を育むことは人にしかできない特別な能力を育むことではないかと思うんです。そんな「人の強み」に今後はよりフォーカスする必要があるのではないかとも考えています。そういう意味でもこのカードがこども達の人としての強みを育む一助になれば嬉しいなぁとも思います。

でも、すべてのこども達に学ぶことを好きになってほしい。学びを楽しんでほしい。完全に私のエゴですが、本当はそれだけだったりします。

それは私にとってすごく幸せなことだからです。そんな感覚をみんなに味わってほしいし、共感したい。

このカードが、こども達が学びを楽しむ感覚を体験するきっかけになれば、すごく幸せだなぁと思います。

■まとめ

カードのコンセプトをまとめると、

①まなびにはサイクルがある(とらえる⇒かんがえる⇒あらわす)
②まなびのサイクルが好循環すれば、まなぶちからは楽しさの中で成長する
③サイクルをうまく回すために各ステップに関する能力を遊びで育む

です。このコンセプトをもとに開発したのが「Cyclearn」です!

ご興味ある方はこれ以降、具体的な内容に触れているのでぜひ読んでみてください!

また、感想や遊び方のアイディアなどコメントいただけると非常に嬉しいです!記事中の写真は素材と質感にこだわって製作した試作品ですが、こども達と遊んでみたい!欲しい!という方は自作用の印刷データがあるので、コメントください!

長文お付き合い頂きありがとうございました!

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■遊び方紹介

大人はゲームマスターとしてこどもたちを見守る立場で参加します。

例① 動物を探そう!
【遊び方・ルール】
・まず、カードを表向きでランダムに並べます。カードにはいろんな動物がいろんな映り方をしています。

・次にゲームマスターは動物を一匹指定します。たとえば、犬を指定するとこどもたちは犬を探してカードを集めます。

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【狙い】
①目的の動物を探すことで「くらべる」ちからを強化
こどもたちは目に飛び込んでくるカードの内容と自分の中にある「犬」という概念とくらべて、写っているものが何かを認識します。

②目的の動物かどうか判断することで「ならべる」ちからを強化
写っているものが何かを認知する過程で、たとえば「犬」の一部しか映っていない場合、こども達はそれを「犬」だと直観で判断します。その後、なんでそう思ったか?などの問いを立てる事で、「犬」だと判断した理由をこども達が言語化します。この時、論理をならべる思考を伴います。

③適切な質問で「ながめる」ちからを強化
上述のように適切な質問をすることで、それについて客観的にこども達は考える機会が与えられ、メタ認知能力(自分を客観的に見るちから)も育まれると考えています。


例② 仲間はどれかな?
【遊び方・ルール】

・まず、カードを表向きでランダムに並べます。カードにはいろんな共通点をもった動物や似ている動物が映っています。

・次にゲームマスターはその中からカードを一枚指定します。たとえば、チンパンジーを指定すると、こどもたちはそのカードと仲間と思うものを探して集めます。

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【狙い】
①動物を類比、対比することで「くらべる」ちからを強化
チンパンジーと他の動物をくらべることで、どう似ていて、どう違うのかということを認識します。

②動物の特徴から体系化することで「まとめる」ちからを強化
どう似ていて、どう違うかという認識から共通点をまとめて、法則を探すことで帰納的思考を伴います。

③適切な質問で「ながめる」ちからを強化
前述と同様。

例③ どのカードでしょう?
【遊び方・ルール】

・まず、カードを表向きでランダムに並べます。カードにはいろんな状況の動物が映っています。

・次にゲームマスターはこどもたちから1人指名します。指名された子は並べられたカードの中から1枚(例えばパンダ)を他の子には内緒で選び、そのカードに写っている「動物の名前」は使わずにそのカードの状況を説明します。

・他の子はその説明を聞いて該当するカードを探します。

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【狙い】
①動物の状況を文章にすることで「うみだす」「つたえる」ちからを強化
写真から認識した情報を、他人につたわるように考えて「体の色は白と黒で、はっぱを食べている」などと文章として、うみだすことで表現します。

②動物の状況をイメージすることで「かんじる」ちからを強化
写真から「食事の時間のようだ」など、その背景にあるストーリーなどを想像したり、感じ取ったりします。

③適切な質問で「ながめる」ちからを強化
前述と同様、


その他、随時遊び方を考案中ですが、あなた自身がこども達とどういう風に遊んだらいいか考えて、遊び方をつくってもらえるとうれしいです。

【遊び方のポイント】
①親はファシリテーターとなり、問いを投げかける!

「なんで犬だと思ったの?」「 どういう仲間なの?」「どんなふうに言ったらみんなに伝わったかな?」等の質問をすることで、こども達が理由を考え、発言し、自分自身を客観視する(ながめる)能力を身に着ける手助けになると思います。

②まず、お手本を見せる
遊びの難易度によっては、なかなかうまく進行しないときもあると思いますが、そんなときはまず具体例を示してあげるとよいと思います。

③ルールにとらわれない
プレイ自体を楽しんでもいいし、取り札の枚数で競う形式でもいいです! また、基本の遊び方の例を超えて、こども達なりに自由に発想して遊んでいるなら、それで良いと思っています! 遊び方は無限大です!ただ、プレイヤー全員が参加できるように、うまくファシリテートしてあげてください。

■プレイ風景

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