#28 「地方で働く、地元を想う」仕事を通じた関わりづくり【地域複業の可能性】
竹内義晴です。この番組は、組織作りやコミュニケーション、キャリアデザインなどの人材育成、複業やテレワーク、多拠点ワークといったこれからの働き方についてゆるゆるとお話をしていく番組です。
昨日からですね、地域複業に関するお話を始めました。地域複業というのは何かというと、自分の住んでいるところ、あるいは自分が働いている地域を越えて、別の地域でいままで培ってきた自分の経験を生かし、その地域に役立てていくこと、貢献すること。それが結果的に、自分に返ってくることという、そんなお話をしました。
なぜボクが、地域複業に関心があるかというと、特に人口減少問題ですね。地方で人がどんどん減っているという現実の中で、この課題感をどうにかしていったほうがいいんじゃないかな……と、真面目に思っていて。
この番組は、「ゆるゆるとお話をしていく」と言いながら、いま、真面目な話をしているなと自覚しつつ話し始めています。2017年にサイボウズで複業を始めて、比較的早い段階で「もしも、ボクの働き方の逆――つまり、都市部の人が、地方の企業で、いままでの経験を生かして複業のような形で働くこと――で関わることができたら、どんなことが起きるのか。
今日は、地域複業に関心を持ち始めた経緯や、それからどんなことをやってきたかについて、当時妄想したことも含めてお話ししていこうかなと思います。
なお、「当時妄想したこと」という言い方をしているのは、いまは若干変わっているかもしれないからです。基本的なスタンスは変わりませんが、目的とか、課題感は、いまのほうが明確に持っている……というほうが正しい言い方かなと思います。
地方や地元のことが気になるタイミング
2017年当時、ボクがフルリモート、週2日複業という働き方を始めたときに、サイボウズのオウンドメディア「サイボウズ式」で記事を書きました。
そのときにも、地域複業に関することを書いていたので、たぶん、働きはじめて1ヶ月経ってないときに、「家族を守る複業」「地方に戻るのが前提の複業」など、地域複業のことを考えはじめていました。
感覚はいまよりは強くなかったけれど、当時から地方は人は減っていて、危機感はあったんですよね。当時は、地方の企業に対して、都市部の方々がいままでの経験を生かして週に何日か複業をすることで、地方にとってのメリットがあるな、と。加えて、働く側の人のメリットも結構多いなって思っていました。
ここで言う「働く人のメリット」とは、たとえば地元があって、「地元に帰りたいけど、なかなか帰れない」とか、帰るまでいかないけど、実は地元に関心あって、「この先、実家どうなるんだろうな」と考えたことがある方って多いと思うんですよ。
ボク自身、28歳で神奈川からUターンしましたが、そのとき思ったのが、「このままだと、実家どうなるのかな、なくなるのかな」っていうのが、Uターンした動機の1つです。このような「なんとなくだけど、気になる」っていうタイミングって誰しもがあると思うんです。
複業なら盆暮れ正月以外にも地域と関わることができる
でも、いままでだと、盆暮れ正月しか帰ることができないし、いきなりUターンとか、移住とか、転職とかっていうのはそうそうできることではありません。ましてや、家族がいて、パートナーがいて、子どもがいたりしたら、パートナーの仕事を変えなければいけないし、子どもの学校も転校させなければいけないかもしれない。そう、簡単なことじゃないって思います。
だけど、複業のような形であれば会社を辞めなくてもいいし、引っ越さなくてもいいし、子どもを転校させなくてもいい。かつそれが、月に1回なのか2回なのかわかりませんが、盆暮れ正月以外に、地元や地域のためにいままでの経験を生かして貢献したい、関わっていきたいと思っている方にとっては、仕事を通じた関係ができるので、メリットが多いんじゃないかなって思いました。こういった形を真面目にできないものなのかなって思ったんですよね。
仕事と関係人口の関係
加えて、ボク自身が複業で働き始めてから、月に1回ぐらい東京と新潟を行き来するようになって、「あ、関係人口って、つまりこういうことだな」って思ったんですよ。
突然「関係人口」という言葉を出してしまいましたが、いままで、地方を活性化しようと思ったら選択肢は2つで、1つは「移住者を増やす」こと。もう1つは「観光のような形で訪れる人を増やす」こと。
移住者は「定住人口」と呼ぶんですけど、「定住人口を増やす」は、常にそこに住んでいる人を増やすことを言います。観光のような形で短期間訪れる人のことを「交流人口」と呼びます。でも、移住はハードルが高いし、交流人口、要は観光での来訪だと、そこまで地域との関係性を構築できるわけではありません。
そこで、近年注目を集めているのが「関係人口」です。関係人口とは「観光以上、定住・移住未満」の形です。つまり、引っ越さなくていいし、移住はしなくていい。だけど、何らかの形で地域を往来して行ったり来たりする関係性を作るということですね。
関係人口を作ろうとしたとき、地域で複業をするとすごくいいなと思ったんです。なぜならば、仕事を通じて月に1回とか2回とか往来することによって、徐々に関係性を構築できるからです。あと、業務なので、基本的に気分で今月行くとか行かないとかではなくて、必ず行くじゃないですか。
ボク、関係性って「どうやって構築されるのかな」って考えたときに、いきなり関係性を構築するのって難しいと思っていて。観光案内所みたいなところに行って、そこで急に関係性が構築できるかっていったらできない。ある程度、何かしら目的や繋がる何かがなければ関係性は構築しにくいし、できない。
だけど、そこに「仕事」というツールがあるだけで、定期的に通うことができます。また、そんなに地域のことや複雑なことを知らなくても、「仕事」っていう共通言語があれば会話ができます。
こういった形で、定期的に往来する機会を作る上で、仕事ってすごくいいよなって思っていたわけです。なので、仕事を通じた関係性ってどうにか構築できないものかなって考え始めたのが2017年だったんですよね。
まったく理解されなかった地域複業
ただ、2017年当時、そもそも複業している人がほぼいませんでした。あと、フルリモートで働くみたいな働き方が、いまほど広がっていない中では、話してもほぼ理解されない。だから「どうしたらいいんだろう?」って、ずっと思いながら過ごすことになりました。
その中で、いろいろやってみることで見えてきたことがあったので、明日は、2017年に地域複業の取り組みについて気づいてから、何をしてきたのかというお話をしていきたいと思います。