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決算発表前の経理部のドタバタを言語化する試み

この記事の目的

この記事は、決算発表前の経理部って、なぜかドタバタしてるよなぁ。何やってんだアイツラ。と疑問に思われている他部門の皆様、監査法人にお勤めの皆様向けに、記載をしています。
この記事は、各社によって、異なるところは多いだろうと思いながらも、そんな決算発表前のドタバタを言語化する試みです。

筆者のご紹介

14年ほど大手監査法人にて監査業務をやってました。直近1年半程度は事業会社で連結決算、適時開示や監査法人に対する対応も行っています。副業で、少しですが、一般事業会社の方に監査法人対応のご支援をすることもあります。

決算期では、単純にやることが増える

なぜドタバタしているのか、それは、結論から言うと、
決算期だと、単純にやることが増えるからというのが理由になります。

少し具体的に説明していきます。

前提

3月決算会社の上場企業。
期末日後、1ヶ月以内での開示(決算短信発表)を想定します。
印刷会社はプロネクサス社と契約。

期末日前

名簿管理人である信託会社、印刷会社(プロネクサス社)と打ち合わせをして、決算発表、招集通知発送、株主総会、有報提出、有報提出後の臨報提出までのスケジュールが決まります。
子会社経理担当に連結パッケージについて事前説明(特に変化点、追加された点については、慎重に説明します)。
子会社特有の決算論点は、事前に把握し、潰しておきます。
その後、監査法人、顧問税理士法人にもご連絡。
期末決算の論点は、期末日前までに、監査法人、顧問税理士法人と協議して潰しておきます。

期末日

実査立会確認とか監査法人監査の対応があることが多いです。
この日までに、日次での仕訳、売上債権消込、入金確認等の月次業務があります。

期末日後1週目

単体決算の完了(月次決算と同じ)。
顧問税理士法人に税務レビュー依頼。

期末日後2週目前半

顧問税理士法人から税務レビュー結果返答。その後やり取り。
連結決算が概ね完了。(月次決算と同じ)
決算短信作成開始。
翌期業績予想の最終取りまとめ。

期末日後2週目後半

決算説明資料の作成。
取締役会への報告資料の作成。
決算短信の作成完了。
適時開示(何かあれば・・・)Draftの作成・チェック。
プロネクサス社に決算短信チェック依頼。
取締役会報告資料の準備。
同時並行で、監査法人による監査が始まります。

期末日後3週目前半

決算説明資料の作成開始。
その他の適時開示の作成。
プロネクサス社より決算短信チェックの返信をもらう。
同時並行で、監査法人監査の対応。
東証へ適時開示Draft、決算説明資料Draftの事前連絡。
このあたりで給与計算とか、支払いといった月次業務も入ってくるかもしれません。

期末日後3週目後半

決算説明資料の作成完了。
決算短信のチェック。
適時開示のチェック。
英文決算短信、英文決算説明資料を作成。
会社法計算書類、附属明細書を作成。
同時並行で、監査法人監査の対応。
このあたりで、監査等委員会監査や内部監査の対応もある。

期末日後4週目決算発表日前日まで

決算説明資料のチェック。
決算短信のチェック。
適時開示Draftのチェック。
同時並行で、監査の対応。
決算発表説明会のリハーサル。
このあたりになると、適時開示担当は、一番最後の方まで出社しています。

決算発表日当日

この日は適時開示担当は、一番最初に出社しています。
決算説明資料の最終チェック。
決算短信を最終チェックしています。
適時開示Draftを最終チェックしています。
その後、TDNETに決算短信、決算説明資料、適時開示資料、提出。
取締役会。
決算発表、決算説明会。
終わったときには、ほぼ抜け殻。
その後、PTS株価見たりしてます。

決算発表日翌日以降

決算発表の翌日は、朝9時に株価見るまではソワソワしています。
その後、投資家とのスモールMtgがセットされていたりしますので、落ち着くことはできないです。
同時並行で、監査の対応(ただし、ほぼ抜け殻)。
また、翌月の月次が始まったりします。
そして、招集通知、有報、コーポレート・ガバナンス報告書等の作成へと続く・・・

まとめ

以上、決算発表前の経理部のドタバタを言語化してみる試みでした。
毎月の月次業務に加え、決算開示業務、税務関連業務、会社法関連業務、監査対応業務等が積み重なってしまうことが要因になります。
グラフにすると、こんな感じ。あくまでイメージです。

3月決算上場企業の業務量イメージ

もちろん、やれることは、3月以前に前倒して実施するのですが、どうしても、現状では、3月と4月の繁忙度に差が生じてしまう、というところでしょうか。(厳密には、3月にも何らかのPJ等がはいって、完全な閑散、というわけではないのですが・・・)
なお、将来は、生成AIやシステム連携の進化によって、業務効率化が進み、繁忙度が大幅に平準化されることを期待しています。

経理部の方って、何故か、ポーカーフェースの方が多いんですよね。
ドタバタしている様に見えるかもしれないが、とにかく、あたふたしない。
そして、そつなく、確実に、堅実に、安定して業務を進める。
それは、まるで、昔ロッテにいた小坂誠選手が、難しいゴロを簡単にショートゴロにしてしまうかのように、業務をこなしていく。
それこそが、プロフェッショナリズムなんですよね。

でも、内心は、たまには褒めてくれって、思ってるはず。
なので、たまには、労ってあげたり、優しくしてあげてください。

そして、監査法人の側には、何が言えるでしょうか。決算繁忙期に無理な納期で資料を依頼しても、経理部側の対応は難しくなることが多いと言えるでしょう。それは、監査の進捗にも、影響を及ぼしてしまうかもしれません。経理部の対応の遅さに不満を持つのではなく、例えば、2月3月や四半期毎に分散して依頼をする。相手の立場、状況を理解して、コミュニケーションを取りながら、お互いに業務を行うことが、重要なのではないでしょうか。
なお、監査法人の中にも、そつなく、確実に、堅実に、安定して業務を進める方がいらっしゃるのですが、経理部側からの目線だと、そういう方は大変信頼されますし、感謝されていると思いますよ。逆に、タイムリ-に資料を確認せず、コミュニケーションをとらないまま、あとから、色々と言ってくる監査チーム担当には強い警戒心を持たれると思います。

以上、経理部のトリセツのような記事になってしまいましたが、今日はこのあたりで、終わりたいと思います。読んでいただき、ありがとうございました!

PS.すぐ四半期決算となりますが、体調に気をつけながら、経理部の皆様も監査法人にいらっしゃる方も、がんばりましょう!

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