楓さん作「私の方が彼をよく知っているのに...」の男性膝枕版「俺の方が彼女をよく知っているのに...」
はじめに
原作の導入に、以下のように書かれています。
『今回は、オン・マイ・オウン という歌の
和訳を読んだときに、膝枕ちゃんのことが重なりその視点で書いてみよう!と思いました。
膝枕ちゃん視点のせつないストーリーに
なっています。』
ということで、ほんとうに切ない女ごころを見事に表していて、楓さんのいつもながらの素晴らしい作品です。
このような作品の主人公の男女を変えることができるのか?!
およそ、そのようなことは想像もできないような美しいストーリーですけども、挑戦してみました。男性でも「せつなさ」が出せるかどうか!!
原作者の楓さんにもみていただき、修正を加えていますが、ぜひ楓さんの原作もご覧下さい。公開早々、12月8日に鈴蘭さんが膝開きしてくださいました。12月18日に、原作とともにこもにゃんと読ませていただきました。読みたいとのご希望があれば是非どうぞ。一言、お声がけください。
そして、全ての始まりはこれ。こちらもご覧ください。
楓さん作「私の方が彼をよく知っているのに...」の男性膝枕版「俺の方が彼女をよく知っているのに…」(関成孝)
(太字は原作に追筆した部分です)
俺は膝枕。腰から下の膝枕商品なんだ。
どんな商品かって?
膝枕でググってみてくれ。
すぐ出て来るさ。
最新型で、AI機能を搭載してるんだぜ。
俺には、買ってほしいユーザがいるんだ!!
40代、独り身の彼女。
そう聞いたら、冴えない女性のような気が
しちゃうよな。
いやいや、まぁまぁ美人で
相談にも乗ってくれて優しいんだよな。
だから…やっぱりモテるよなぁ。
彼女のところには
「いやぁ、優しいなぁ!」
「好きになっちゃうよ〜」
「好きになってもいいだろう?」
って、よく男からメールが来てる。
俺は、実は、彼女のパソコンや携帯の中身も
知ってる。
いや、誤解しないでくれ。俺はストーカーじゃない。
彼女の部屋の"Siri"とも仲がいいもんだから
彼女が何が好きなのか、どんな暮らしをして
いるのかも良く知ってんのさ。
俺たちは、「膝枕カンパニー」という会社の
工場で待機してる。
ユーザが膝枕を検索しているのを
いつも眺めてた。
俺は彼女に選んで欲しくて
いつも、彼女のパソコンや携帯の"おすすめ"の
ところに、俺が出てくるように
仕組んできた。
ほら!今日もまた、仕事から帰った彼女が
メールをチェックしたり、Google検索を
してるだろう。
今日も彼女がタップしてくれた。
彼女はいろんな膝枕の中から、どれにしようかなぁ〜と悩んでいるようだ。
じゃあ、膝枕のラインナップを紹介してみようか。
俺のようなワイルドなすね毛にいやされる「親父のあぐら膝枕」は、
Virgin Snow膝が自慢の「箱入り娘膝枕」を筆頭とした膝枕の派生整品だ。
他に、母に耳かきされた遠い日の思い出が蘇る「おふくろさん膝枕」もある。
ふんわりした感触がお好きな輩(やから)なら、体脂肪40%、やみつきの沈み込みを約束する「ぽっちゃり膝枕」がお勧めさ。
彼女の好みはどんな膝枕だろう。
いつもいつもお勧めのところに、「親父のあぐら膝枕」が出てくるようにしているんだが。もちろん、少しは小ぎれいにしている。
彼女も気にはしているようだ。
さて、今日も遅い時間になって来たぜ。
そろそろ寝るのかな?
今日も検索するだけで終わりかな?と
思ってたら。
今日は、「親父のあぐら膝枕」をタップして
確認事項のページまで飛んできたぜ!
個数のところに1と入力!!
そしてスクロールをしながら、個人情報を…
なんと今日は買う気のようだ!!
俺はドキドキしながら見守ってた。
俺に手はないけど、祈るような気持ちで
膝を合わせてた。
やったー注文完了〜!!!
とうとう彼女の元へと出荷だ〜
お急ぎ便で、今から出荷準備。
あれよあれよという間に、深夜のバイトが
棚から俺を取り出して、伝票を貼ってくれた。
やっと彼女の元へ、明日の午前中には彼女に会える。ワイルドなすね毛…気に入ってもらえるかなぁ?きれいにはしてるんだぜ。
ワクワク、どきどきするような気持ちの中、トラックへと
積まれた。
翌日の午前中
彼女の部屋のインターホンを鳴らしたら
「もう来たのね、早かったわ〜」とひとりごとを
言って、宅配業者の方から俺を受け取ってくた。
「へぇ〜こんな風になってるのね」
「こんにちは、膝枕さん
はじめまして!よく来てくれました」
なんて優しい素敵な声なんだ。
俺のような商品にも、優しく語りかけてくれる
なんて。
根っからの人たらしなんだな。
それから、彼女との生活が始まった。
「行ってきます」
「寂しいかもしれないけど待っててね」
「ピンポン鳴っても出たらダメよ」
「あ、出られないか 笑」
彼女は、たくさんの男性と連絡を取り合ってるけど、この部屋に連れてくることはなかった。
俺は、すっかり安心していた。
彼女がいつも俺に頭を預けながら
優しい眼差しで話しかけてくれる。
「あなたの膝が一番だわ」
「こんなこと言えるのはあなただけだわ」
「いつまでも私のそばにいてね」
「私はいつもあなたのそばにいるわ」
部屋に置いてくれるのは俺だけだ。
俺の存在は特別。
俺は、彼女の全てを知っている。
彼女を癒してあげられる。
でも、俺のこの気持ちを彼女は知らない。
伝える術がないんだ。
俺はひとりで妄想しているだけ。
彼女が仕事に行くと、彼女のいないシーンとしているこの部屋の中で
俺はいつも、彼女との優しい時間を
思い出していた。
彼女は俺の気持ちを知らないけど大丈夫さ。
それでも満足しなくっちゃ。
だって、俺だけがこの部屋にいて
彼女の愚痴を聞いている。
彼女が優しく話しかけてくれるんだ。
こんな優しい時間は束の間ではなくて
ずっと永遠に続くと思ってた。
そんなある日のこと
仕事から帰ってきた彼女の電話が鳴った。
「あれ、ハマちゃんどうした?」
「え、大丈夫?飲み会で転んだの?」
「今どこにいるの?」
「タクシー捕まらない?」
「そっかぁ。じゃあ車で迎えに行って
あげるわ。ちょっと時間かかるけど
待てる?」
彼女は、"浜田"という 男の電話を切ると
俺のところへやってきて、何も言わずに
クローゼットの中へ入た。
いつもとても優しいのに
何も話しかけてくれない。
俺を見てもくれない。
あの優しい眼差しはどこへ行ったんだろう。
彼女がそそくさと出て行き
そのうち雨が降って来た。
静かな部屋に、雨音だけが聞こえる。
なんだか俺の心の中のように
シトシトと暗く、そしてザワザワと
落ち着かない時間が過ぎて行く。
2時間くらい経っただろうか?
ひとりじゃない足音が聞こえてきた。
俺は手に汗、いや、膝に汗をかいて来た。
誰かと一緒に帰って来たのか?
腰のあたりが熱くなり、いや熱くなったような
感覚だ。
胃はないけど、全体がキリキリしてきた。
"ヤメテクレ!ナンデホカノオトコヲ
コノヘヤニイレルンダ?"
もちろんそんな声、彼女に聞こえない。
浜田と呼ばれる男は、彼女にとって特別なのか?
今までたくさんの男がいたのに、誰も部屋に
呼ばなかったのに、なぜ浜田は入れるんだ?
浜田はそんなにいい男なのか?
俺は、クローゼットの隙間から
浜田を眺めていた。
じゃれあっているのか?楽しそうな話し声が
聞こえてたが…
そのうち静かになった。
部屋の中に、ひと筋の光が差し込んできた。
やっと朝になったんだろう。
浜田は帰った。
俺はほとんど気が休まらなかった。
俺はこの部屋に来る前から
ずっと24時間彼女のことを考えていた。
どうやって、彼女に選んでもらおうと。
作戦を練りに練って
妄想に妄想を重ねて
やっとの思いでここまでたどり着いた。
それなのに…
彼女は夜になって、俺をクローゼットから
出してくれた。
そして、いつもの優しい眼差しで話しかけてくれた。
「今日まで癒してくれてありがとう…
いつも私のつたない話を聞いてくれて、
あなたには感謝してるわ、本当にありがとう」
「ごめんなさい、ここには置いて置けないの」
「あなたならわかってくれるわよね?」
まさか、俺を捨てに行くのか?
こんなに優しい彼女が、なんで?
俺、何か悪いことした?
俺はおまえのことを何でも理解してるのに。
"マッテ!オイテイカナイデクレ"
誰も知らない
誰もいない
静かなゴミ捨て場に置いて行かれてしまった。
大丈夫!
膝をにじらせて帰ろう。
道に迷ったら
きっと彼女が見つけに来てくれる。
俺は夢を見ているだけだよな?
楽しい時間、新しい世界
きっと素敵なあしたが待っているはずだよな。
でも…彼女はこの気持ちを知らない。
俺の話し相手は、自分だけ。
そう、思い知らされた。
一生夢を見るだけなんだな。
どこまでも続く道、どこまでも続く空。
彼女の姿だけが見つけられない。
雨が降って来た。
こんなに濡れているのに…彼女は迎えに来てくれないのか。
膝を閉じて眠りにつこう。
明日、目が覚めたら、人間になれるだろうか?
やっぱり、ただの妄想で終わるのだろうか?
俺のほうが
彼女をよく知ってるのに…
(終)
クラブハウスでのリプレイ
2023年12月8日 鈴蘭さん。「正調膝枕」楓さんの原作とともに。
2023年12月11日 鈴蘭さん。楓さんの原作とともに。
2023年12月13日 こもにゃんさん。
2023年12月18日 こもシゲで。
2023年12月20日 他3遍ともに、鈴蘭さん
2023年12月27日 楓さんの原作他とともに鈴蘭さん
2024年2月7日 楓さんの作品とともに、鈴蘭さん。
2024年2月12日 Yukaさん。
2024年3月11日 楓さんの他の作品とともに、鈴蘭さん。
2024年6月7日 うきさんのお部屋で、高坂奈々恵さん。
2024年6月19日 関
2024年8月11日 関
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