大学・短大生の休退学状況に関する解説

文部科学省の調査で、今年4月~10月までの大学・短大生の休退学が前年比で大きく減少していたことが明らかになりました。大学中退予防の専門家として解説したいと思います。

まずは調査結果の概略ですが「文科省が全国の国公私立大に調査したところ、4~10月に新型コロナの感染拡大の影響を受けて中退した学生・大学院生は1033人、休学は4205人に上った。このうち、学部1年生はそれぞれ378人(約37%)、759人(約18%)だった。一方、全体の中退者は2万5008人、休学は6万3460人で、昨年の同時期と比べると、ともに6833人、6865人減っていた。」ということですから、中退者は2割以上減少しています。
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/fea0dfc32411dbfb32487baaf875b26022e9ffc2

次に、これは過去に100名超の大学・短大・専門学校中退者の追跡調査(対面式インタビュー)を行った際に得られたことですが、学生生活に問題が発生してから、退学届を実際に出すまでには、約11か月間のタイムラグがあります(中退白書2010)。そのことから言えることは、今年4~10月に大学・短大を中退した学生たちの多くは、昨年の5月から11月に学業継続に関わる問題を抱えていたことになります。また、この時期の中退者が少ないことは、それでイコール問題が起きていないというわけではなく、問題は起きているが、中退するかしないか、意思決定や退学届けを出すという行動をコロナ禍で先送りしている方が多くいらっしゃるのではないか、ということです。

この分野の専門家としては、来年2月以降に中退者が大幅に増加することを危惧しています。問題自体は11ヵ月前、あるいはその前後に起きていたわけですから、今年4~10月の休退学者が減少したからといって、問題自体が起きていなかったということにはならないわけです。

次に、コロナ禍以降、特に今年4月から今日(12月19日)までに発生した問題は、11ヵ月後の来年3月以降に中退という行動に現れてきます。コロナ禍ですので、11ヵ月のタイムラグが同じように生じるかはわかりませんが、ある程度の期間を置いて、出てきます。既に1033人の大学・大学院生が新型コロナの感染拡大の影響を受けて中退したということは、日本で緊急事態宣言が発出されてから約半年間の中退者としては、決して少なくありませんし、コロナ禍による中退者の増加はおそらくこれからが本番です。

ですので、広く社会的に共有、お伝えしたいことは、4月~10月の休退学者が減っていたからといって、平時の中退やコロナ禍による中退が全体として減るということは、現段階では言いにくいということです。引き続き大学・短大関係者、文部科学省、日本学生支援機構、その他さまざまな団体・企業による取り組み、またご家庭でのケアが必要な状況が続いています。引き続き総力を挙げて、若者たちの未来を守っていく行動を、協力・連携しながら進めていく必要があります。

あまり長くても読んでくれる方が減るでしょうから、解説は以上にします。
(各教育機関からの専門的なご相談に応じておりますので、やむにやまれぬ休退学を予防する活動にお悩みの際はご連絡いただければと思います。)

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