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SDGsについて日頃感じていること

ここ1-2年、「SDGs」という単語を耳にする機会が増えてきました。
実際、「2021年新語・流行語大賞」にもノミネートされていました。

SDGsは大事。
環境問題、社会のあり方に、人々が注目するのはいいことです。

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで定められた2030年までの15年間で達成すべき、17の目標、169のターゲット、232の指標のことを指します。

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1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう
6. 安全な水とトイレを世界中に
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤を作ろう
10. 人や国の不平等を無くそう
11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任 つかう責任
13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさを守ろう
16. 平和と公正をすべての人に
17. パートナーシップで目標を達成しよう

外務省ホームページより
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

「SDGs」については、ニュースやSNSなどでは主に環境問題の文脈で語られることが多いですが、実際は「持続可能な開発目標」であり、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」を指します。

経済発展とともに環境汚染や資源枯渇が問題になり、「今だけ儲かれば、暮らしが豊かになれば良い」ではなく、「将来もずっと豊かであり続ける」社会へ改革しましょうというのが、「持続可能な開発」。
大切なことは、「これから生まれてくる人を含む、全ての人の人権を守り、全ての人が協力して平和と繁栄を達成すること」、2021年では80億人弱、2040年には90億人、2060年には100億人に達すると予測されている人類の「誰もが安心して暮らし続けられること」です。

「経済・社会・環境」の全てが大事であり、今後生まれてくる人たちを含めて「誰も取り残さない」というのがキーワード。

環境問題と絡めて「豊かさよりも環境」といった主張が展開されることも多いですが、SDGsはそんなことを言っていません。

ざっくり言うと、化石燃料に依存した社会から脱却しつつ、食糧もエネルギーもあらゆるモノに関して今後さらに増加する全人類の需要を満たしつつ、より多くの人々が安心して暮らし続けられる社会を築いていきましょうという話です


現在語られているSDGsには大きく二つの問題があります。

一つは「数が多くて覚えられない、何が大事なのかわからない、優先順位がついていない」という点です。
先進国と途上国では取り組むべき課題も違うし、問題解決のための手法も違ってきます。先進国間でも各国の事情や気候環境によって異なります。
1〜17の目標を順番通りに素直に解釈すれば、「豊かさ」>「環境」
まず、貧困や飢餓をなくして「誰も取り残さない」ことが大事ではないかと思います。

二つ目は、「やったフリがしやすい」ということがあげられます。
審査機関があるわけでもなければ何らかの資格があるわけでもなく、誰でも手に入れられるバッジやロゴをつかって「やってます」アピールをすればやったことにできてしまいます。
企業や政府がSDGsの取り組みをアピールすることで、実態以上に「社会のために」「社会課題との関わり」を連想させる「SDGsウオッシュ」と呼ばれるイメージ戦略に利用されて、ほとんど問題の解決に関係のない「やってるフリ」ばかりに資源や税金が投入されて、結局「本質的な問題は何も解決されない」といったことが往々にしてありがちです。

例えば、プラスチックストローを紙ストローに変える取り組み。それ自体は問題提起や意識改革という面から見れば素晴らしいことですが、他の部分のコーヒープランテーションでの人権問題や環境保護への取り組みやプラスチック容器を無視して、ストローだけで環境への取り組みを発信しているとしたら、単なるイメージ戦略でしょう。今後の企業活動の見極めが重要です。

ストローは紙製になったけれど…

政府の進める「レジ袋の有料化」も、行動変容や意識改革を促すという良い面はあったと思いますが、海洋プラスチックごみの0.5% にも満たないプラスチック製レジ袋をターゲットにしている点については、ほとんど問題の解決には関係のない「やってるフリ」に近いものがあります。

確かにレジ袋は使っていないけれど…

本来であれば、石油由来のナフサに税金をかけて、石油以外のものを原材料とするモノづくりを促進する、海洋ごみの回収事業やプラスチックの分解技術に補助金を出すといったことが必要なのではないでしょうか。

今後、SDGsを進めていく上で欠くことのできない、植物由来のバイオ素材の活用を進めてくれている零細企業を叩くことにどれほどの意味があるのか疑問です。

さとうきびの搾りカスから作られた素材を使用

「SDGs」はとても大事です。
その実現のためには、化石燃料に依存しない環境にやさしい革新的な技術の開発が不可欠です。

「〇〇をやめましょう」ではジリ貧で何も解決しないばかりか、殺し合って人口を減らすしかなくなるので、技術で乗り越えていくしかないのです。

  • 化石燃料に変わる代替エネルギーの技術開発を促進して、自然エネルギーを活用しましょう

  • 化石燃料に依存した化学肥料や農薬に頼ることなく、穀物の生産量を高める技術を開発して食糧を増やしましょう

  • 化石燃料由来のモノづくりから脱却して、環境にやさしい素材を使ったモノづくりを実現しましょう

  • 温暖化ガスを削減する技術やプラスチックなどの環境汚染の原因となっているゴミを分解する技術を開発しましょう

実は、これらのことはすでに植物や微生物が行っています。
光エネルギーを変換する。
糖やタンパク質を作る。
代謝産物を作る。
そして、最近では、プラスチックを分解する菌も報告されています(下記論文)

これら植物や微生物のしくみを理解し活用する、あるいは彼らのメカニズムを模倣して新しい技術を開発することが、世界を変えてSDGsを実現するために必要不可欠でしょう。

ーー
SDGsで環境問題に関心を持つことは大切ですが、
やってるフリに騙されていないか?
本当に改善につながっているか?
「誰一人取り残さない」の考え方を実践しているか?

よく考えたいですね。

余談:
鯨を絶滅から救ったのは、反捕鯨団体ではなくて石油、
牛や馬を動物虐待から救ったのは、動物愛護団体ではなくてトラクターや自動車、
森林を壊滅的な破壊から防いでいるのも、環境保護団体ではなくて、農業の発展によって単位耕作面積あたりの穀物生産量が劇的に増加したからというのが大きい。
個人個人の意識や行動変容ももちろん大事ですが、社会全体としては技術を開発していくしかないのだろうと思います。

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