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極端な弱い者イジメをせず適度なハイブリッド化ができるのも日本文化の強みでもある。

『なんてことを言うと、「命より経済を優先するのか!」「貴様のような人間がいるから感染者が減らないのだ」と殺意を覚える方も少なくないと思うが、コロナは決してナメてはいけない恐ろしい感染症だということにはなんの異論もない。しかし、一方でこの日本においては、厚生労働省が、年間推定約1000万人が感染して約1万人が亡くなる、と注意喚起してきた季節性インフルエンザよりも「犠牲者」が少ないのも否定できない事実である。なぜ毎年この季節になると200万人もの感染者が出るほど流行し、多くの高齢者や基礎疾患のある方たちの命を容赦なく奪っていくインフルエンザに対応している日本の医療が、コロナでは1日1000人の重症患者でいともたやすく崩壊してしまったのかというと、「いつもと違うこと」をしたからだ。「感染症2類相当」というおかしなルールと日本医師会への政治的配慮から、一部の公的病院にコロナ患者を集中させるという、人身御供型の医療戦略をとったのである。それは裏を返せば、この「需要と供給」を度外視した戦略ミスさえ見直しすれば、「野戦病院」のような過酷な労働環境を強いられる、一部の医療従事者のダメージはかなり緩和できるということだ。一方、「出勤者7割削減」というできもしない目標を、このままゴリ押しすると、ダメージは広範な業界や職種に及ぶ。日本社会全体へのダメージは、今の医療現場のそれを軽く上回ってしまうのだ。「テレワークで生産性アップ!」みたいな話を素直に受けとっているピュアな人たちからすると、にわかに信じられない話だろうが、実はテレワークには向いている国と、向いてない国がある。産業構造や労働文化的にテレワークがフィットしない国が、無理に背伸びしたところでプラスの効果は少なく、弊害のほうが多くなってしまう。日本はそんな「テレワークに向かない国」の筆頭なのだ。では、そんな日本が無理にテレワークを進めていくと、どんな「副作用」が起きるのかというと、以下の3つが代表的なところだ。(1)小規模事業者で働く人の賃金がさらに低くなる(2)出勤削減目標達成のために派遣やバイトが犠牲になる(3)「テレワークうつ」などのメンタルヘルス問題が急増する~テレワークというワーキングスタイルは、自分の頭で考えて、遠く離れた上司や同僚とリモートでつながりながら、自分のペースで仕事を出して「成果」を出すというドライな労働文化には非常にフィットする。だから、「ホウレンソウ信仰」のない米国や欧州ではテレワーク実施率が高いのだ。しかし、日本では仕事とは単に個人が「成果」を出すことではない。上司や取引先などとの円滑な人間関係をまわしながら成し遂げるものだと考えられる。だから、「ホウレンソウ」を何よりも重視するし、「接待」「飲みニケーション」「飛び込み営業」のような対面コミュニケーションを重視するのだ。こういう「対面重視文化」の中で、「テレワーク」が敬遠されるのは当然ではないか。日本では大企業、中小企業問わず新人研修では「ホウレンソウ」が真っ先に叩き込まれる。そして、この「ホウレンソウ」を20年、30年、40年とやってきたおじさんたちが、日本の政治や経済をまわしている。そういう「大日本ホウレンソウ帝国」ともいうべき状況の中で、ホウレンソウに効果のないテレワークが呼びかけられても建前として、「おお、そうだ、これからはテレワークだ!」と同調するフリをするだろうが、裏では「あんなんじゃ仕事できねえよな」と対面で仕事をするに決まっている。そのあたりの欺瞞(ぎまん)は、「出勤者7割削減」を呼びかける、菅総理や二階幹事長が、オレたちには当てはまらないと言わんばかりに、リアルでの面会や会食を続けていることが、雄弁に物語っている。では、そんな老いも若きもホウレンソウが骨の髄まで叩き込まれた日本人に、コロナだからと「出勤者7割削減」を強引に押し付けたらどんな問題が起きるだろうか。まず、これまで当たり前のホウレンソウができないので不安に押しつぶされそうになるだろう。それに耐えてテレワークを続ければ、ストレスも増えていくので、心身を壊す人が続出するはずだ。つまり、いくらコロナが怖いからといって、日本人にはそもそも難しいテレワークを強引に進めてしまうと、日本中に心の壊れた人を量産することになってしまうのだ。以上が、筆者が「出勤者7割削減」の呼びかけをやめたほうがいいという理由だ。なぜこんな感染拡大を抑えるための国民運動にケチをつけるようなことを、あえて申し上げたのかというと、「できもしない目標」を掲げたときの日本はロクなことにならないのは、太平洋戦争や福島第一原発事故などでも証明されている、歴史の教訓だからだ。できないことは、素直にできないとあきらめる。途上国でもワクチン接種がスタートする中でいまだにスケジュールさえ見えないなど、コロナ禍によって、日本の「実力」が残酷なまでに露呈している。そろそろこの厳しい現実を真摯(しんし)に受け止めて、身の丈に合ったコロナ対策を掲げるべきだ。』

向いている向いていないではやはり日本の企業文化にテレワークは向いていないだろう。ただし極端な弱い者イジメをせず適度なハイブリッド化ができるのも日本文化の強みでもある。

「出勤者7割削減」なんて無理な呼びかけは、やめたほうがいい理由
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2101/26/news056.html

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