見出し画像

人生とは「前のところからキテ、次のところへイク間」でしかないのですから。

『だって、財産のために親の再婚を反対するような子どもが、先々ちゃんと介護してくれる確率は決して高くないですから。財産目当てだと思われている女性も、途中で離婚したら財産はもらえなくなるわけですから、たとえ財産目当てであっても、自分の介護はしてくれるという保証はあるでしょう。財産目当てでもいいから、女の人が一緒に暮らそうと言ってくれるのであれば、これまで稼いで貯めてきた甲斐があるじゃないですか。ところが息子や娘に反対されて再婚をあきらめてしまったら、独り身のまま寂しい日々を過ごし、介護が必要になったときに子どももあてにならない。~そうしたときに介護保険を使えば、特別養護老人ホームに入ったところで、費用はだいたい厚生年金の範囲で収まります。そうなると老後の蓄えなど必要ない。高齢になってもなお、「将来が不安だから」とお金をできるだけ使わないで済ませようとする人が実に多いのですが、年金をもらえる年齢であれば、病気になって入院することになっても国の保険制度を使えば支出はさほどかかりません。そのとき初めて、一生懸命に節約して頑張って貯金なんかしなくてよかったな、損したなという気分になるはずです。先日、経済ジャーナリストの荻原博子さんと対談したのですが、萩原さんは、「実際に介護を経験した人がかかった費用は、一人で平均約600万円。夫婦二人で1200万円。医療は高額療養費制度があるからそれほどかからない。200万もあれば大丈夫。あわせて1400万円、そこにお墓代100万円を足したとしても1500万円。それぐらい貯めて後は全部使ったっていい」とおっしゃっていました。そもそも論として、老後の蓄えというのは本来、老後使い切るための蓄えです。それなのに、年金額のなかで生活しなくてはいけないと思い込んでいる人が多すぎる。何歳まで生きるかわからないからとやたら心配して、死ぬまで金を貯め続けるなんてバカげたことはありません。つまり、お金に対しての考え方をどう変えてほしいかと言うと、お金を持っていることより使うことのほうに価値がある、ということです。むしろ、体が動いて頭もしっかりしているうちに、せっかく貯めたお金を使っておかないと、人生を楽しめないし、心も体も老化が進むばかりです。知らない土地を旅したり、普段行かないレストランでめずらしい料理を食べたりすると、前頭葉が活性化されて若返ります。前頭葉というのは新奇なことを行なうときに働くものなのです。健康やアンチエイジングにお金を使い、おしゃれをしていろんなところに出かければ、幸福感も高まります。さらに、孫や子どもとの思い出づくりにお金を使えば、それだけ家族たちから大切にされるはずです。人生の終幕を迎えつつある人からよく聞くのは、「死ぬまでに楽しい思い出をもっと残しておきたかった」という声です。「あのとき、ケチケチしなければよかった」と悔やんでいたと遺族の方から聞くこともめずらしくありません。お金があって、世界一周旅行に行きたくても、要介護になったらまず行けなくなります。行けるときに行っておかないと思い出はつくれません。自分で稼いだお金です。配偶者と貯めてきたお金なのですから、自分たちの幸せのために使うのが当たり前。それこそ豪華客船で世界一周してもいいし、温泉旅行でもいいし、おいしいものを食べに行くのでも何でもいい。自分の心を満たすためにお金を使い、思い出を残す。だんだん体が思うように動かなくなり、ベッドの上で過ごす日が多くなる人生の最終段階で、心の支えとなってくれるのは、「あのときは楽しかったな」という思い出です。多くの高齢者を診てきた私の経験からも、素敵な思い出がたくさん残っている人が幸せに旅立っていくように思います。』

金持ちの高齢者がなかなか幸せになれない理由…和田秀樹「幸せに死んでいく人」が共通して持っているもの人生の最終段階で心の支えとなるのは「お金」ではなく「思い出」PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/84558

映画「ジョーブラックをよろしく」でも死神のジョーが病院で出会った末期患者老婆に「あの世の旦那、アンタいる所がちがうよ。~もう写真はたくさん撮ったかい?思い出ができたら早く帰るんだよ。いつまでも島にいると楽しいだけじゃすまないよ」と諭されるシーンがあります。そうですなんです。人生とは「前のところからキテ、次のところへイク間」でしかないのですから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?