ホントに良い人財に来てほしいと思うなら自分達が魅力的になるしかないのだ。就活は婚活と同じ要素を多分に持っている。

『近藤:なぜ新卒採用が会社を大きく変えるかというと、新卒採用の場合は中途採用と異なり、会社として育てる仕組みを作る必要があるからです。育成環境やルール、マニュアル、仕組みづくりなど、若い社員のパフォーマンスが上がるような組織体制を作っていくために、会社が変わらなければいけません。また、特に売り手市場で新卒採用を成功させるには、社長や総務の採用担当が1人で頑張っても厳しいのです。大事なのは、人を採用するのがゴールではなく、採った人材が入社後に活躍して会社に居続けてもらうこと。そのためには、現場のトップがきちんと選考から関わり、この人材を責任を持って育てるという覚悟を持つ必要があります。―― 新卒採用には現場の人間も関わることが重要なのですか?近藤:同じ事業部の入社5~10年目くらいで、会社のリーダークラスの社員たちも新卒採用プロジェクトに入れる必要があります。社長、採用担当、各部門の責任者、リーダー、新人内定者。事業部や世代を超えて会社のキーマンが集うプロジェクトが新卒採用です。内定者がある程度一人前になるには約5年かかるので、5年先の会社の姿から逆算して、今からどういう人材を採用して、どんな環境で育てていくかを考えなければいけません。会社の中心人物が集まって会社の5年先をイメージし、採るべき人材を設定し、会社の魅力をどう伝えていくのか、もしくは魅力がなければどうやって作っていくのかを議論しながら組織づくりを進めることが大きな価値になります。―― 新卒採用活動は会社のビジョンの設定やブランディングのきっかけでもあるのですね。しかし、会社の中心メンバーとなるのはたいてい多忙な社員たちですよね。「今の業務で忙殺されているのにさらに新卒採用までやるの?」と抵抗されませんか?近藤:だからこそ「今の忙しさをこれからも続けたいですか?」という話です。5年10年先の自分の理想の状態を作ろうと思ったら、緊急ではないけれど重要なことを進める必要があります。しかし、1人でやるのは難しいので、チームを組むことが大切です。会社のなかで暇な人がやってもいい人材は採れません。忙しい人材は魅力的であり、周囲から期待される人。そういう人々が一緒になってやるべきです。しかし、最初の意識付けが大事なのであって、実際の選考活動がスタートしたら、それほど現場に負荷をかけてはいけません。例えば、新人は合同説明会のブースの運営を手伝う、ある子は説明会の座談会、ある部長は面接を5人だけ担当する、というように役割分断する必要があります。―― 就職活動をする学生は働くことに対してどのような意識を持っていて、どのような仕事に魅力を感じるのでしょうか。近藤:「2020年卒マイナビ大学生就職意識調査」では、学生が会社を選ぶポイントに「安定している」「自分のやりたい仕事ができる」「給料がいい」などが挙がっています。ただ、これらに振り回される必要はないとも思います。例えば、「休みが多くて残業が少ない会社」が人気だとすると、休日が少なくて残業が多いと打ち出すと、中小企業であればなおさらそっぽ向かれるのでは、と一見思いますよね。でも、自分の会社が仮に休みが多くて残業が少ない会社だとして、学生から自分の会社を選んだ理由にそれを言われたいですか? 事実だとしても、休みや残業の有無で決めてほしいでしょうか。―― 「イケメンで年収が高いから結婚しました」と言われるようなものですね(笑)。近藤:「自分たちの会社は何を理由に選んでほしいのか」を研ぎ澄ませて考えなければいけません。当社の3年目のある社員は、6社から内定が出て最後に当社に入ると決めたんです。その理由を聞いたら「一番困難だと思ったから」でした。大手企業に入って「すごい」と言われるより、10年後のレガシードを作って「すごい」と言われる人生の方がワクワクしたそうです。中途半端に「他社より休みが多いよ」「残業を是正しているから働きやすいよ」などと言ってはいけません。そこを分かっていないから「もっと休みを多くしたり、初任給を上げたりしたほうがいいのかな」なんて考えてしまうのです。問題の本質はそこではありません。―― 採用以後の離職率を下げるような取り組みはありますか?近藤:2つパターンがあって、新卒採用の経験がある会社とそうでない会社の離職率は当然異なります。新卒採用を始めたばかりのときは、育成体制やマニュアルができていないので、離職要因は多いです。だから「体制ができたら新卒採用する」という会社がありますが、それを待っていると何十年も先になるので、先に採用します。その際は中途半端な人材でなく、いい意味で現場が慌てる人材を採る必要があります。―― といいますと?近藤:「この人が辞めてもまた採用すればいいや」となる人材ではなく、「この人が辞めるのはわれわれに問題がある」と自分たちにベクトルが向くくらいの人材を入れなければいけません。その結果、おのずと既存社員の意識や、育成に対する姿勢、採用に必要な仕組みが整ってきます。新卒採用を始めて最初の3年程度は若干離職者が出る可能性がありますが、続けていくと人材の定着性が上がっていきます。―― 採用活動によって自分たちの課題も浮かび上がってくるから、それを解決するための仕組みや体制が作れるわけですね。裏を返せば、新卒活動をしなければ自分たちにどこに問題があるか見えてこないと。近藤:新卒採用はつい人材を“選ぶ”活動のように思いがちですが、最後は採用段階で選んでもらい、入社後も選び続けてもらわなければいけません。採用活動は「選ばれる会社になれるかどうか」が肝なのです。採用は命を投資していただく活動だからこそ、その投資に値する会社を作っていかなければいけない。もし魅力的な人材が他の会社を選んだとき、「経営者である自分やうちのスタッフがどう磨かれていたら、僕らと働くと意思決定をしてくれただろうか」とリアリティーの高い状態でフィードバックされます。だから、採用活動では自分たちこそが磨かれていきます。「魅力的な人材がひきつけられる社員の集団になろう」と思えるのが、新卒採用プロジェクトのいいところです。~―― いろいろとお話を伺うと、確かにその通りだと感じることばかりです。新卒採用の問題も、解決策も明確です。それでも、ほとんどの会社が実行に移せていない理由はどこにあるのでしょうか?近藤:変な常識にはまっているのです。ただ、常識を変えるにはそれ以上の代替策が必要です。「筆記と面接やめましょう」「リクナビ、マイナビやめましょう」「その代わりに行動を見る選考に変えましょう」「社員を巻き込んで選考をやりましょう」。そうなると多くの場合が踏み切れないんですよね。イノベーションは「安全」や「普通」といった「常識」の外にあります。しかし、安全の反対は危険、普通の反対は変、常識の反対は非常識となると、そっちのほうがいいとは思えないのです。そこで、「安全の反対は冒険かな?」「常識の反対は新常識や超常識を作ればいいな」と思ってみる。自分たちがワクワクしていないのに、人はひきつけられません。採用チームで経営者も含めて「こういう採用活動ができたら、自分たちにとっても来た学生にとってもよかったとなるよね」とワクワクしていると、本当に人は集まってきます。たったそれだけですが、それがとても重要なのです。』

これは何も「中小企業」に限った事ではない。「新卒採用」自体を否定する向きも最近は出てきているが会社という集団を動かしているのはヒトであり人財なのであって、グローバル的な「個人のスキルとキャリアを会社が買う」様な採用方法だと定着率は自ずと悪くなる。それは応募するヒトは会社を自分のキャリアアップの一手段としてしか捉えていない場合が多いからである。ホントに良い人財に来てほしいと思うなら自分達が魅力的になるしかないのだ。就活は婚活と同じ要素を多分に持っている。

1万7000人の新卒が殺到する中小企業社長が語る、優秀な人材の集め方
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1912/06/news046.html

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